メンタルヘルス・マネジメント検定の難易度top
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大阪商工会議所が実施しているメンタルヘルス・マネジメント検定は、職場の担当部門(職位・職種)に合わせてⅠ種・Ⅱ種・Ⅲ種の3クラス(コース)に分かれますが、下記に示す受験者データからも見てとれるように、同試験の申込者は「Ⅱ種」と「Ⅲ種」に集中(全体の約9割)しており、この傾向は、毎試験、ほぼ変わりません(どちらかというと、Ⅱ種・Ⅲ種コースの占める割合がさらに増えている)。
申込者数の比較グラフ
そこで、受験者が多い「Ⅱ種」と「Ⅲ種」にスポットを当て、いったいどれくらい難しい試験なのかを様々な角度から分析し、本試験の難易度について、比較・考察してみました。





メンタルヘルス・マネジメント検定:Ⅱ種とⅢ種の難易度の比較

下記に示す資料は、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種・Ⅲ種試験の合格率の推移を比較したものです(第2回の合格率は未確認のためデータに反映されていません)。
合格率の比較(Ⅲ種・Ⅱ種)
ご覧のように、合格率は「Ⅲ種」試験の方が高い水準で推移(平均値:Ⅱ種…60.5%|Ⅲ種…78.7%)しており、事実上の上位クラスに当たる「Ⅱ種」試験の方が合格は厳しい状況にあるようで、単純に合格率の数値を比較するなら、「Ⅲ種」よりも「Ⅱ種」の方が難易度の高い問題が出題されているという見方ができます。

また、グラフを見ると、「Ⅲ種」に比べて「Ⅱ種」試験の方が合格率の数値の変動が激しいことから、回によって問題の難易度が安定していないのではないかということが推測され(同試験は合格基準が予め公表されている絶対評価試験なので、合格基準点を満たせば合格できる試験)、そういう意味では、「Ⅲ種」以上に運的な要素(つまり、問題が比較的優しい回に当たれば合格者は増えますが、逆に難易度の高い問題が多い回に当たってしまうと、合格基準を満たすことができず不合格者が増える…)で合格の有無が決まることがあるように思われます。

では、次に両試験の試験内容を比較してみましょう。
Ⅱ種(ラインケアコース) Ⅲ種(セルフケアコース)
受験資格 特になし
試験時間 2時間
出題形式 選択問題(4肢択一 / マークシート方式)
問題数 計50問(100点満点 / 各2点)
合格基準 70点以上の得点(100点満点)
試験時間をはじめ、出題形式、問題数、合格基準は、いずれも同じ形をとっているため、これだけでは両コースを比較することはできません。

そこで、さらに到達目標や出題内容などを比較してみると、次のような点で大きな違いがあることがわかります。
Ⅱ種(ラインケアコース) Ⅲ種(セルフケアコース)
対象 管理職 一般社員
目的 部門内、上司としての部下のメンタルヘルス対策の推進 組織における従業員自らのメンタルヘルス対策の推進
到達目標 部下が不調に陥らないよう普段から配慮するとともに、部下に不調が見受けられた場合には安全配慮義務に則った対応を行うことができる。 自らのストレスの状況・状態を把握することにより、不調に早期に気づき、自らケアを行い、必要であれば助けを求めることができる。
出題内容 ①メンタルヘルスケアの意義と管理監督者の役割
②ストレスおよびメンタルヘルスに関する基礎知識
③職場環境等の評価および改善の方法
④個々の労働者への配慮
⑤労働者からの相談への対応
⑥社内外資源との連携
⑦心の健康問題をもつ復職者への支援の方法
①メンタルヘルスケアの意義
②ストレスおよびメンタルヘルスに関する基礎知識
③セルフケアの重要性
④ストレスへの気づき方
⑤ストレスへの対処、軽減の方法
そもそも、メンタルヘルス・マネジメント検定は、試験の難易度によってコース分けしているわけではなく、あくまで対象者(受験者)の地位・立場によって区分けされているに過ぎないという建前があります。

そのため、「Ⅱ種」コースの方が難しいという受験者が多いのは、自分自身のメンタルヘルス対策が中心となる「Ⅲ種」に対し、「Ⅱ種」は自分自身のケアに加えて、管理者としての周囲の部下を含めたメンタルケアや職場改善などの要素が強くなってくるため、管理職経験のない一般社員にとっては、どうしてもとっつきにくい(理解しにくい)面があるからです。

しかし、単に管理職経験がないから「Ⅱ種」試験の方が難しいというわけではなさそうです。

「Ⅱ種」「Ⅲ種」それぞれの試験問題(過去問)を比較・分析してみると、主に次のような点で出題問題の内容に違いが見られます。
Ⅱ種(ラインケアコース) Ⅲ種(セルフケアコース)
チェックⅢ種コースよりも専門用語が多く、知らないと答えられない問題が目立つ…

チェック問題によってはかなり細かい知識が問われる…

チェック試験範囲が広い…
チェック 全体的に常識的な問題が多いため、社会人としての一般常識があれば解答しやすい…

チェック細かい内容が問われる問題もあるが、Ⅱ種ほどではない…
また、近年は全体的に問題の長文化が見られ、内容が理解しにくい設問や選択肢も増えています。

そのため、試験開始当初にみられた公式テキストや過去問の丸暗記では解答に辿り着けないような、ちょっと視点を変えた応用力が試される問題も出題されはじめているので、かつてのような楽に合格できるような試験ではなくなってきているようです。
Ⅱ種(ラインケアコース):出題例

「ラインによるケア」において管理監督者に求められる役割に関する次の記述のうち、最も適切なものを一つだけ選び、解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。


(1)職場環境がメンタルヘルス不調の原因である場合には、第二の不調者が出現しないように、しばらく様子をみる必要がある。

(2)職場環境などの改善には、物理的な職場環境のみならず、労働時間、仕事の量と質、職場の人間関係、職場の文化や風土などに関する問題点を改善することも含まれる。

(3)部下からの相談に対応する場合には、まず問題解決を目的として、適切な情報を提供することが最も大切である。

(4)休職者が職場復帰する際の職場の環境整備は、標準化された職場復帰支援プログラムに則って行わなければならない。

Ⅲ種(セルフケアコース):出題例

メンタルヘルス不調への早期対処に関する次の記述のうち、最も不適切なものを一つだけ選び、解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。


(1)メンタルヘルス不調は、本人の判断能力も低下していることがあるため、第三者の指摘によって初めて気づくという場合も少なくない。

(2)ストレスの健康面での現れ方としては、微熱、腰痛、頭痛や食欲不振などの身体面に現れるよりも、「気分が乗らない」、「少し落ち込んでいる」などの気分の面に出る。

(3)メンタルヘルス不調は、多くの場合、独力で解決できる問題ではない。

(4)メンタルヘルス不調について周りの人に自発的に相談していくという行動自体に問題を解決する力が備わってくる。
とはいえ、「Ⅱ種」「Ⅲ種」コースは、いずれも基本的に公式テキストに準じた問題で構成されているマークシート形式の選択問題なので、過去問を中心に理解を深めて本番に臨めば、合格基準を満たす程度の得点は稼げるはずです。