知的財産管理技能士とはtop
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コレだけは押える!知的財産管理技能士の基礎知識

知的財産管理技能検定を実施している指定試験機関の公式HP(知的財産教育協会)によると、知的財産管理技能士とは「企業や団体の中にいながら知的財産を適切に管理・活用して、その企業や団体に貢献できる能力を有する人」とあります。

ここでいう〝知的財産〟とは、知的財産基本法に定められている財産(権)のことを指しますが、このルールを無視して、他人の権利を侵害すると、その権利を有する企業や団体から訴えられてしまうこともあるのです。
知的財産権の侵害によるリスク
チェック 会社の信用が落ちる
チェック 事業の停止
チェック 莫大な賠償金請求 …など
そこで、これらの知的財産にかかわる企業間トラブルを未然に防ぐための一定の能力が備わっているかどうかを客観的に測定する試験が知的財産管理技能検定試験であり、この試験に合格した者は〝知的財産管理技能士〟を名乗ることができます。
知的財産基本法
1級 2級 3級
特許 コンテンツ ブランド
試験区分 国家試験
受験資格 学科試験
・知的財産に関する業務について4年以上の実務経験者
・2級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験者
・3級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務について2年以上の実務経験者
・学校教育法による大学又は大学院において検定職種1級に関する科目について10単位以上を修得した者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者
・ビジネス著作権検定上級合格者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験者 …など
・知的財産に関する業務について2年以上の実務経験者

・3級技能検定の合格者

・学校教育法による大学又は大学院において検定職種に関する科目について10単位以上を修得した者

・ビジネス著作権検定上級合格者

・2級技能検定の一部合格者(学科または実技いずれか一方の試験のみの合格者)
・知的財産に関する業務に従事している者または従事しようとしている者

・3級技能検定の一部合格者(学科または実技いずれか一方の試験のみの合格者)
実技試験
・1級技能検定(特許専門業務)学科試験合格者
・一級知的財産管理技能士(コンテンツ/ブランド専門業務)
実技試験
・1級技能検定(コンテンツ専門業務)学科試験合格者
・一級知的財産管理技能士(特許/ブランド専門業務)
実技試験
・1級技能検定(コンテンツ専門業務)学科試験合格者
・一級知的財産管理技能士(特許/コンテンツ専門業務)
受検料 学科 … 8,900円
実技 … 23,000円
学科 … 7,500円
実技 … 7,500円
学科 … 5,500円
実技 … 5,500円
試験日 3回程度 / 年(3月 / 6月 / 11月)
試験形式 学科 … マークシート方式 [4肢択一]
※ 一部、3肢択一
実技 … 筆記試験と口頭試験
学科 … 方式 [4肢択一] ※ 一部、3肢択一
実技 … 筆記試験[記述]
学科 … マークシート方式 [3肢択一]
実技 … 筆記試験 [記述]
問題数 学科 … 45問
実技 … 5問
学科 … 40問
実技 … 40問
学科 … 30問
実技 … 30問
試験時間 学科 … 100分
実技 … 約30分
学科 … 60分
実技 … 60分
学科 … 45分
実技 … 45分
合格基準 学科 … 満点の80%以上
実技 … 満点の60%以上
学科 … 満点の80%以上
実技 … 満点の80%以上
学科 … 満点の70%以上
実技 … 満点の70%以上
試験地
(予定)
北海道 / 宮城 / 茨城 / 千葉 / 東京 / 神奈川 / 新潟 / 石川 / 長野 / 静岡 / 愛知 / 京都
大阪 / 兵庫 / 岡山 / 広島 / 山口 / 香川 / 福岡 / 沖縄(参考:第28回)
実施機関 一般社団法人 知的財産教育協会
〒102-0082 東京都千代田区一番町23-3 日本生命一番町ビル4階

知的財産管理技能士と弁理士の違い

知的財産に関するスペシャリストといえば〝弁理士〟を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

そのため、同じ国家資格である弁理士と知的財産管理技能士との違いがよくわからない・・・という方もいるようです。

そこで、双方の資格の違いについて簡単に説明しておきましょう。
知的財産管理技能士
知的財産に関する一定のスキルがあることを証明するための資格
矢印
名称独占資格

資格者だけ名乗ることができる!(つまり、名乗りさえしなければ資格がなくても類似業務が行える)
矢印
企業内部にて、専門知識を活かし、業務上の課題発見や解決に努める…など
弁理士
企業や個人のアイデアを権利として守る代理人
矢印
業務独占資格

その資格がなければ、特定の業務に関しては行うことができない!
矢印
知的財産権(特許/意匠 等)の取得申請手続きの代理、知的財産権に関する紛争処理…など
つまり、弁理士が〝業務独占資格〟であるのに対し、知的財産管理技能士は〝名称独占資格〟であるという点が両者の大きな違いのひとつです。

したがって、どちらの国家資格も知的財産に関する能力が求められますが、知的財産管理技能士には弁理士のように特定の業務に対する独占権があるわけではありません。





知的財産管理技能士:国家検定の難易度

冒頭でも説明したように、知的財産管理技能士の資格を得るには、知的財産教育協会が実施する知的財産管理技能検定試験に合格しなければなりません。

そこで気になるのが試験の難易度ですが、等級別にみた試験合格率は下記表のとおりです。
実施年月 区分 1級 2級 3級
受検者 合格者 合格率 受検者 合格者 合格率 受検者 合格者 合格率
H28 3月
(23回)
学科 209
(ブランド)
13 6.2% 2,184 799 36.6% 3,446 2,151 62.4%
実技 89
(特許)
72 80.9% 2,107 1,080 51.3% 3,157 2,052 65.0%
7月
(24回)
学科 255
(コンテンツ)
28 11.0% 1,990 970 48.7% 3,359 2,219 66.1%
実技 44
(ブランド)
38 86.4% 1,784 1,019 57.1% 3,200 1,914 59.8%
11月
(25回)
学科 698
(特許)
75 10.7% 2,147 1,204 56.1% 3,304 2,261 68.4%
実技 40
(コンテンツ)
35 87.5% 1,920 803 41.8% 3,354 1,856 55.3%
上位級ほど、より高度で専門的な知識・能力が問われる検定試験ではありますが、1級ともなるとその難易度は飛躍的に上がり、合格率(学科試験)だけでみると超難関試験のひとつである弁理士試験に引けを取らない低水準で推移することもあるようです。
弁理士試験
実施年度 受験者 合格者 合格率
H26 5,599 385 6.9%
H27 4,798 319 6.6%
H28 4,211 296 7.0%
そのため、学科試験自体は四肢択一のマークシート方式で行われますが、そう簡単には得点できないような問題が出題されていることがうかがえます。
1級〈 H22.6月 学科試験より一部抜粋 〉

電機メーカーX社は、Y大学の教授甲と電気自動車専用モーターの共同研究契約を締結し、甲は特殊な機構のモーターの基本発明を理論的に完成した。その事実をY大学とX社に報告する前に、甲はY大学を退職してW大学の教授に赴任した。X社はその研究を甲に継続してもらうために、W大学と共同開発契約を締結し、研究に必要な装置をW大学に寄贈するとともに、自動車のモーター開発に長く携わってきたX社の従業員乙をW大学に研究生として派遣した。従業員乙は甲の理論を具体化するために必要な新たなアイデアを付加してモーターを実用化した。問15~問17に答えなさい。


問15:X社の知的財産部の部員丙は、特許出願人をどのようにすべきか検討している。ア~エの記述を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。なお、Y大学で完成した基本発明は、基礎理論の数式をその発明の構成要素の一部とすることが必要である。Y大学,W大学には職務発明規程が存在し、いずれも教授と企業との共同研究の成果物(知的財産権)は大学と企業に等分に帰属すると規定されていたものとする。

ア.X社が甲より基本発明が完成したとの報告を受けたのはW大学に赴任してからであるので、発明者を甲とし特許出願人をX社とした基本発明の特許出願とする。

イ.発明者の記載をするにあたり、甲を発明者とすると、Y大学とW大学との共同出願にしなければならず手続が煩雑となるので、甲の了承を得て、発明者は従業員乙のみとしてX社の単独出願にすることにする。

ウ.本件発明は基礎理論が基本発明であるので、基本発明の特許出願をX社とY大学との共同出願とし、実用化を可能にしたモーターの発明に関してはX社とW大学との共同出願とすることにする。

エ.実用化したモーターについてのみ特許出願をする場合には、発明者を甲と従業員乙とし、出願人はX社とY大学とW大学としなければならない。
一方、2級試験の合格率は波があり、安定した推移を示していないことから、回によって出題される問題のレベル(つまり、問題が易しい回と難しい回がある)が一定でないことが伺えます。

3級試験においては、まず、下記に示した過去問題をご覧ください。
3級〈 H22.6月 学科試験より一部抜粋 〉

特許権の行使に関するア~ウの記述を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア.特許権は特許出願の日からその効力が発生するので、出願後はいつでも特許権を行使できる。

イ.特許権の行使が可能であるか否かの判断のためには、その特許権の特許請求の範囲と、その特許権を行使しようとする対象製品の技術とを比較することが必要である。

ウ.発明者は、常に、自分の特許発明に係る特許権を行使できる。
知的財産分野について初歩的な管理能力があるかどうかを測定するための検定試験であることから、単純に法律知識を知っているかどうかを問う程度の問題が頻繁に出題されています。

また、合格基準が上位級に比べ緩めに設定されていることもあって、学科・実技ともに試験の合格率は高く、毎回70~80%前後という高水準で推移しているようです。
等級 合格基準
1級 学科 満点の80%以上
実技 満点の60%以上
2級 学科・実技 満点の80%以上
3級 学科・実技 満点の70%以上
したがって、市販の問題集を繰り返し解き、本試験に臨めば独学でも十分合格を狙える試験であることが伺えます。