コンクリート診断士試験の難易度top
法律・経営・経理・ビジネス法律・経営・経理・ビジネスIT・Web・情報・通信・電気建築・不動産自然環境・衛生語学・旅行その他
コンクリート診断士試験は、実務経験者に有利な試験と言う人もいますが、コンクリ業界で長年働いているというだけでは、合格率20%を切るこの試験に合格することは難しいようです。

つまり、実務で得たコンクリートに関する知識や技術があるのと、試験対策は別物だということです。

そこで、コンクリート診断士試験の難しさはどこら辺にあるのか・・・

過去問題を振り返りながら、少し考察してみたいと思います。




分析!コンクリート診断士試験の過去問題 [択一式問題 編]

コンクリート診断士試験の択一式問題は、すべて四肢択一のマークシート方式で行われます。

ちなみに、出題問題数は、2011年度以降、50問から40問に減少していますが、3時間30分という試験時間に変更はありません。

そのため、40問程度なら十分余裕もをって解答できる!と言いたいところですが、コンクリート診断士試験の試験時間は、記述式問題の解答も含めた制限時間なので、正直なところ、択一式問題にあまり時間を割いているわけにはいきません(公表されいないので、はっきりとしたことは分かりませんが、合否判断のウェートは記述問題の方が高いと言われています)。

つまり、後半に待ち構えている2題の記述式問題にじっくりと腰を据えて取り組むためにも、択一式問題はできれば1時間弱程度で終わらせたい!と考える受験者が多いようですが、実際は1時間半程度費やしてしまっているというのが現状のようです。

そこで、コンクリート診断士試験の択一式問題では、いったいどんな内容・出題パターンの問題が出題されているのか、過去問題をいくつか例に挙げておくので、その特徴や出題レベルを、ある程度把握しておきましょう。
正誤問題パターン
過去問題を振り返ってみると、コンクリート診断士試験の択一式問題は正誤問題として出題されるパターンが多いようです。

ただし、適当なものと不適当なものを選ばせる問題がランダムで出題されていることから、ミスを誘う嫌らしい手段をとってきます。

特に後半の記述式問題のことを考えると、必ずしも見直し時間が取れるとは限りません。

したがって、問題を解く際は設問をよく読み、正反対の解答をするようなケアレスミスだけはしないよう十分に気を付けてください。
出題例:正誤問題①

各種原因によって発生するコンクリートのひび割れの特徴に関する次の記述のうち、適当なものはどれか。

(1)アルカリ骨材反応によるひび割れは、コンクリートの膨張に起因するため、亀甲状を呈することが多いが、内部の鉄筋の影響によって、柱やはりでは、部材軸方向に大きなひび割れが同時に生じる場合もある。

(2)凍結融解の繰返しによるひび割れは、コンクリート中の凍結水が表面付近から融解するときに生じる表層部の収縮に起因するため、直線状を呈し、ひび割れの深さは比較的浅い。

(3)塩化物の作用によってかぶり(厚さ)の小さい鉄筋コンクリートに生じるひび割れは、鉄と塩化物が化合するときの鉄筋の体積膨張に起因するため、はりの下側では鉄筋軸に直角方向に生じ、ひび割れ幅は比較的大きくなる。

(4)硬化コンクリートに打継がれたマスコンクリートに生じるひび割れは、打継がれたコンクリートの水和熱による膨張に起因するため、打継ぎ面に沿って、ひび割れ幅は小さい。


出題例:正誤問題②

コンクリートの塩害に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。

(1)コンクリート中の鋼材に塩化物イオンが作用すると、鋼材表面の不働態皮膜が破壊されて鋼材が腐食する。

(2)外部環境から供給される塩化物は、使用材料から供給される塩化物と異なり、フリーデル氏塩として固定されない。

(3)高炉セメントを使用したコンクリートでは、普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートに比ベ、塩化物イオンの拡散係数が小さい。

(4)コンクリート中にフリーデル氏塩として固定された塩化物イオンは、中性化の進行により溶出し、中性化部分より内部に濃縮する。
計算、穴埋め、組合せ問題パターン
本試験では正誤問題が大半を占めるものの、中には計算問題や組合せ問題、あるいは組合せ&穴埋問題として出題されるパターンも確認されています。

また、正誤問題パターンなどでも出題されていますが、イラストや写真を示した上で、コンクリート診断士としての考えやスキルを問う問題も目立ちます。
出題例:計算問題

JIS A 1107:2002(コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法)に従って構造物から採取したコアを用いて、コンクリートの圧縮強度の測定を行った。コアの平均直径が100mm、コアの平均高さが121mm、試験時最大荷重が252kNであったとき、次のコンクリートの圧縮強度のうち、正しいものはどれか。

JIS A 1107:2002による補正係数
高さ(h)と直径(d)との比 h/d 補正係数
2.00 1.00
1.75 0.98
1.50 0.96
1.25 0.93
1.00 0.87
(1)34.9N/mm2 (2)32.1N/mm2 (3)29.9N/mm2 (4)29.5N/mm2


出題例:組合せ問題①

コンクリートの中性化と塩害の複合劣化に関する次の記述中の( A )~( C )に入る用語の組合せのうち、適当なものはどれか。

① 除塩不足の海砂を使用すると、中性化の進行が( A )
② 中性化が進行して塩化物イオンの濃縮が起こるのは、( B )が分解するためである
③ コンクリート中のphが小さくなると、それに応じて鉄筋腐食が発生する限界塩化物イオン量は( C )
(A) (B) (C)
(1) 遅くなる フリーデル氏塩 大きくなる
(2) 遅くなる エトリンガイト 小さくなる
(3) 速くなる エトリンガイト 大きくなる
(4) 速くなる フリーデル氏塩 小さくなる

出題例:組合せ問題②

写真A~Cに示される鉄筋コンクリート部材に生じたひび割れとその主な原因に関する次の組合せのうち、適当なものはどれか。

写真-A
桁(下フランジ)側面のひび割れ
写真A
写真-B
擁壁のひび割れ
写真B
写真-C
道路橋床版下面のひび割れ
写真C
写真-A 写真-B 写真-C
(1) 中性化 乾燥収縮 セメントの水和熱
(2) 支保工の沈下 凍害 火害
(3) アルカリ骨材反応 セメントの水和熱 乾燥収縮
(4) 塩害 アルカリ骨材反応 疲労

出題例:組合せ & 穴埋め問題

塩害に関する次の記述中の( A )~( C )にあてはまる語句として、次の組合せのうち適当なものはどれか。

海中部では、感潮部と比べるとコンクリート中の鋼材の腐食の進行が( A )になる。これは、海水中の( B )が( C )からである。
(A) (B) (C)
(1) 速く 水酸化物イオン(OH-) 多い
(2) 遅く 溶存酸素 少ない
(3) 速く 溶存酸素 多い
(4) 遅く 水酸化物イオン(OH-) 少ない


個数問題パターン
選択問題で最もやっかいな出題パターンが個数問題です。

個数問題とは、下記に示した過去問題のように、求められている正解肢が必ずしも1つとは限らないため、知識がうろ覚えだと、自信をもって解答することができません。

また、消去法も使えず、問題によっては選択肢すべてをチェックしなければ解答することができないものもあるため、時間が掛かるといった受験者泣かせの出題パターンであり、受験者全体の正解率が平均的に低くなる傾向があります。

※ 消去法とは?… 明らかに間違っている選択肢を1つずつ消していくことで、選択肢を絞り込んでいく方法。選択肢が減ることで、ヤマ勘による解答でも、正解の確率が上がる(つまり、選択肢を2つに絞ることができれば、ヤマ勘でも正解の確率は50%)。一方、個数問題では消去法が使えないため、ヤマ勘で答えた場合の正解になる確率は25%と低い。
出題例:個数問題①

次の気体のうち、水に溶けてコンクリートを腐食させるものの個数はいくつか。

  塩化水素(HCI) ふっ化水素(HF) 硫化水素(H2S) 二酸化イオウ(SO2)

 (1)1個  (2)2個  (3)3個  (4)4個


出題例:個数問題②

普通ボルトランドセメントを用いたコンクリートの中性化(炭酸化)に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものの個数はいくつか。

① コンクリートが中性化(炭酸化)すると収縮する。
② 中性化(炭酸化)した部分のコンクリートは、弱アルカリ性を示す。
③ 水セメント比と中性化(炭酸化)速度との間には相関性はない。
④ 中性化(炭酸化)することにより、コンクリートの圧縮強度は低下する。

 (1)1個  (2)2個  (3)3個  (4)4個
その他の出題パターンや特徴
コンクリート診断士試験の択一式問題では、出題項目がほぼ決まっている分野がある一方で、本試験で狙われやすい論点が予測しづらく、広範な範囲を一通り学習しておかなければ対処できない分野(調査手法|補修・補強工法などが良い例)もあることから、いかに試験範囲を効率よく勉強し、得点に結びつけるかが合否を分けるポイントになってきます。

また、比較的まだ新しい資格なので、今後もこれまで見られなかった新しい分野からの出題も十分考えられます。
出題例:その他①

鉄筋腐食の調査法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)自然電位法は、鉄筋腐食の進行速度の評価を目的とした電気化学的調査方法であり、ひび割れ発生後の腐食評価に有効である。

(2)分極抵抗法では、換算した腐食電流密度から腐食速度の推定を行う。

(3)電気低抗法では、鉄筋をとりまくコンクリートの電気抵抗から、鉄筋の腐食し易さを評価するものであるが、鉄筋そのものの腐食状態を直接表わすことはできない。

(4)交流インピーダンス法では、周波数の異なる交流電圧を印加して、周波数によって電流経路が異なる性質を利用して腐食に対する抵抗性を求める。


出題例:その他②

各種補修工法の期待効果と補修後の点検項目に関する次の組合わせのうち、不適当なものはどれか。
番号 補修工法 期待効果 補修後の点検項目
(1) 電気防食工法 鋼材の防食 電源の作動状況、陽極材の消耗程度、定期的な電気回路の健全性
(2) 表面被覆工法 劣化因子の侵入阻止による劣化進行の抑制 被覆材のひび割れやはく離、水分の滲出状況
(3) ひび割れ注入工法 ひび割れの被覆と水密性の回復 シーリング材の劣化およびコンクリートのはく離
(4) 断面修復工法 欠損断面の修復と鋼材の保護 打継ぎ部のひび割れやはく離


分析!コンクリート診断士試験の過去問題 [記述式問題 編]

出題形式 小論文
試験時間 3時間30分(四肢択一問題も含む)
出題問題 ・問題A(必須/1,000字程度)
・問題B(選択/1,000字以内)
コンクリート診断士試験における記述式問題は「必須問題(問題A)」と「選択問題(問題B)」とに分かれ、各問題から1問、計2題の小論文を完成させなければなりません。

過去問題を分析してみると、必須問題【A】の方は、これまで診断士として相応しいかどうか、その資質を評価する趣旨の問題が多かったものの、近年は特に最近の時事問題と絡めた形で出題し、診断士としての考えを求めるケースが目立つように思われます。
出題例:必須問題A

我が国では、これまでに社会資本として建設されたコンクリート構造物の一部で経年劣化が顕在化しており、その維持管理維持管理の費用が今後ますます増大すると予想されている。一方で、景気悪化などにより、さらなる効率的な維持管理が求められている。これらの現状を踏まえて以下の問いに答えよ。

問1:社会資本の整備のあり方について、あなたの考えを300字以内で延べよ。

問2:コンクリート診断士としてどのように構造物の維持管理に取り組むべきか、対象とする構造物を特定し、点検、評価・判定、対策のそれぞれについてあなたの考えを600字以内で延べよ。
一方、選択問題【B】の方は、下記に示した過去問題のように、図表や写真を使いながら具体的な事例を示し、問題点や必要な対策法について問うのが特徴です。

必須問題とは異なり、実際の調査・診断に即した形で出題されやすいので、実務的な要素が強く、より実践的な問題を出題してきます。

いずれの問題も、択一式問題とは異なり、国語力(文章力と字数制限内にまとめるテクニック)が求められてくるので、この手の論文形式の試験経験がない受験者にとっては対策が立てづらく、難易度が高く感じられるようです。
小論文の難しさ
出題例:選択問題B

図1~図5【省略】に示す鉄筋コンクリート造4階建ての食品工場において、図1および図2のようなひび割れ(ひび割れ幅0.2~1.0mmを図化)が南北面の外壁に発生している。この工場は、5年前の夏期にコンクリート打設が完了し、その秋に竣工している。なお、構造物に関する情報は表1の通りであり、屋上からの漏水および基礎の不同沈下は生じていない。次の問いに1,000字以内で答えよ。

--- 表1 構造物に関する概要 ---
項目 概要
外壁の壁厚および配筋 南面:壁厚400mm 縦横D16@200ダブル配筋(鉄筋比:0.5%)
その他の面:壁厚200mm、縦横D10@200ダブル配筋(鉄筋比:0.36%)
外壁仕上げ 打放し仕上げ
外壁目地 (垂直方向)各スパン中央部に1本、目地深さ:屋外20mm、屋内15mm
(水平方向)各階毎に1本、目地深さ:屋外20mm、屋内0mm
使用コンクリート 「普通27 18 20 N」使用骨材:硬質砂岩砕石・砕砂
屋上スラブの仕様(外断熱仕様) 硬質ポリスチレンフォーム厚さ35mm
アスファルト防水・シンダーコンクリート押さえ
その他 屋内は通年にわたって空調がされている
問1:図1、図2に示したこの建物のひび割れの特徴を3つあげよ。
問2:上記であげた3つのひび割れについて、環境、設計、材料、施工などの観点からひび割れの発生原因について説明せよ。
問3:これらのひび割れの補修方法を示し、その選定理由を述べよ。なお、施主は美観と防水を考慮した屋外からの補修を要望している。