通訳案内士試験の難易度top
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日本政府観光局(JNTO)が発表している統計【参考:『訪日外客者数の推移』】によると、日本を訪れる訪日外客数は、年々、増加傾向にあり、2013年には1,000万人を超え、2015年には、2,000万人に迫る勢いを見せています。
訪日外客数の推移
総数(万人) 増減者数 総数(万人) 増減者数
2001年  477.2 +1.5  2010年 861.2 +182.2
2002年 523.9 +46.7 2011年 621.9 -239.3
2003年 521.2 -2.7 2012年 835.8 +213.9
2004年 613.8 +92.6 2013年 1036.4 +200.6
2005年 672.8 +59.0 2014年 1341.3 +304.9
2006年 733.4 +60.6 2015年 1973.7 +632.4
2007年 834.7 +101.3
2008年 835.1 +0.4
2009年 679.0 -156.1
訪日外客数の推移グラフ
※ 6年振りに減少した2009年度は、世界金融危機による傾向後退や円高進行、さらには新型インフルエンザの流行等が大きく影響したと考えられます。また、へ2011年度は、東日本大震災の影響により大幅に減少しています。

この推計値は10年前に比べると、3倍近い増加であり、特に主要都市や観光地などでは、外国人観光客に出会う確率は非常に高く、なんら珍しい光景ではなくなりました。

このような国際交流の流れもあってか、近年、通訳ガイドに対する需要も高まっているようで、語学力を生かした職場(環境)で働きたいと考える人も少なくありません。

中でも通訳案内士は、数ある語学系資格の中で唯一の〝国家資格〟であり、報酬を受けて、外国人旅行(観光)者等に付き添い、ガイドを行うために欠かせない必須資格となっています。

※ 無資格者は50万円以下の罰金!

そこで、気になるのが、通訳案内士として働くために避けては通れない通訳案内士試験難易度です。

一般的に国家資格に属する資格試験は合格率が低く難易度も高いと言われていますが、通訳案内士試験はどうなのか・・・!?

これまでの試験制度や過去問題を基に、試験の難易度について、少し客観的に分析してみたいと思います。




分析!試験形態・合格基準からみた通訳案内士試験の難易度

国際観光振興機構が実施している通訳案内士試験は〝筆記試験〟と〝口述試験〟とで構成されています。

1次試験にあたる〝筆記試験〟は、さらに ① 外国語に関する問題 と ② 日本に関する問題 とに分けることができますが、①と②では、解答方法が大きく異なってきます。
外国語に関する問題 ■ 解答方法 … 記述式
10ヵ国語(英語/フランス語/スペイン語/ドイツ語/中国語/イタリア語/ポルトガル語/ロシア語/韓国語/タイ語)から1ヵ国語を選択
日本に関する問題 ■ 解答方法 … マークシート方式

・日本地理・日本歴史・産業、経済、政治および文化に関する一般常識
《参考:英語選択者の試験結果》
実施年度 受験者数 合格者数 合格率
平成24年度 2,991 398 13.3%
平成25年度 2,885 892 30.9%
平成26年度 5,352 1,422 26.6%
平成27年度 8,491 1,822 21.5%
平成28年度 8,427 2,006 23.8%
試験実施団体である国際観光振興機構が公表している「通訳案内士試験ガイドライン」によると、いずれの問題も《 難易度の極端に高いものであってはならず… 》と明記されていますが、これまでの試験結果を振り返ってみると、合格率に関していえば、お世辞にも高いとはいえない水準で推移しています。

そのため、生半可な勉強では合格が厳しい難易度の高い難関試験であることは間違いありませんが、通訳案内士試験は、受験科目の一部免除制度や科目合格制が導入されているので、これらの制度をうまく活用することで、ビギナー受験者でも十分、合格するチャンスはありそうです。
受験者の負担を軽減する免除制度
受験科目の
一部免除制度
・実用英語検定1級合格者、TOEIC公開テスト840点以上 …など(英語免除)
・総合(国内)旅行業務取扱管理者(地理免除)
・一般(国内)旅行業務取扱主任者(地理免除)
・歴史能力検定日本史1級・2級合格者(歴史免除)
・地域限定通訳案内士試験合格者 …など
科目合格制 「外国語」「日本地理」「日本歴史」「一般常識」の科目中、前年度筆記試験において合格点を得た者は、その合格科目のみ、
翌年度まで申請により免除。筆記試験(全科目)合格者は、翌年度まで申請により筆記試験を免除(つまり、口述試験のみ受験)
※ 免除制度の詳細については、必ず各自で確認(公式HPや受験案内など)してください。
合否判定基準からみた難易度
受験者が最も多い英語選択者を例にとりますが、ここ数年における通訳案内士試験の合格率は、概ね20%台で推移しているようです。

しかし、以前に比べると合格率は上昇したものの、安定した推移は示していません。

※ 2004年までの試験合格率は、概ね4~5%台で推移(ただし、従来の算出方法は出願者数が基準(2005年度以降は、実受験者数で算出))。
筆記試験の合格基準点
外国語 概ね70点を合格基準点とする。
日本地理・歴史・一般常識 日本地理・歴史 … 原則として60点
一般常識 ………… 原則として70点
この点については、筆記試験の評価方法が、これまでの相対評価から、原則、絶対評価へと変更されたことが要因のひとつと考えられます。
絶対評価試験とは…?
規定の合格基準(例 … 100点満点中70点以上で合格)さえ満たしていれば、原則、合格する試験制度。つまり、試験機関が事前に公表している合格基準さえ満たせばよく、受験者同士で競い合うことがない。そのため、試験問題の難易度により、合格者数(合格率)が大幅に変動しやすいのが特徴(試験問題が易しいと大量に合格者数が出るが、試験問題の難易度が高い時期に受験すると合格者数も激減してしまう…いわば運的な要素も強い)。
通訳案内士試験ガイドライン:合否判定

筆記試験の合否判定については、科目ごとに合格基準点を設定し、すべての科目について合格基準点に達しているか否かを判定することにより行う。受験者には筆記試験の合否のほか、科目ごとに合格基準点に達したか否かを通知する。

筆記試験の各科目については、本ガイドラインに従い、科目ごとに目標とする平均点を設定して問題作成を行い、あらかじめ合格基準点を設定しておき、当該合格基準点に達しているか否かを判定することにより行う。

実際の平均点が、目標とする平均点から著しく乖離した科目については、当該科目の試験委員と試験実施事務局から構成される検討会を開催する。その結果、必要があると判断された場合には、合格基準の事後的な調整を行う。この調整は、平均点の乖離度及び得点分布を考慮して行う。

口述試験の合否判定については、本ガイドラインに従い、あらかじめ評価項目及び各評価項目ごとの合格基準点を設定しておき、当該合格基準点に達しているか否かを判定することにより行う。
なお、筆記試験(全科目)合格後に待ち構えているのが、2次試験にあたる〝口述試験〟ですが、筆記試験に比べると、かなり合格しやすい状況にあるようです。

口述試験は、通訳案内士として必要な、実践的コミュニケーション能力が求められる試験ですが、この面接試験は、どちらかというと受験者自身の表現力や資質が観察される試験です。

したがって、日本文化に関する知識や語学力は、もちろん重要ですが、合否判定のベースになっている、評価項目を意識しながら、自分なりの解答をある程度整理して頭に入れておく必要があるでしょう。
通訳案内士試験ガイドラインより(口述試験)
試験方法 合否判定
・試験は、総合的な外国語の能力並びに日本地理、日本歴史及び一般常識に係る正確な知識を活用して行われる、通訳案内の現場で必要とされるコミュニケーションを図るための実践的な能力について判定するものとする。

・試験を受けることができる外国語は、受験者が筆記試験において選択したものと同一のものとする。

・試験は、日本の地理、歴史並びに産業、経済、政治及び文化についての主要な事柄のうち外国人観光旅客の関心の強いものを題材として、受験者に通訳案内の業務を擬似的に行わせることにより実施するものとする。

・試験時間は10分程度とする。

・終了者からの問題の漏洩を避けるため、当該時間帯の間、終了者を未受験者と別の部屋に待機させ、通信機器を預かる等の措置を取るとともに、時間帯によって大きな差が出ないように質問内容のレベルを合わせるなど、受験者間で不公平が生じないような方法とする。
合否判定に当たっては、試験官ごとに基準が大きく異なることがないよう、あらかじめ以下の評価項目ごとに、具体的な評価基準を設定しておくものとする。合否判定は、原則として6割を合格基準点とし、当該合格基準点に達しているか否かを判定することにより行う。

《評価項目》

・プレゼンテーション
・コミュニケーション(臨機応変な対応力、会話継続への意欲等)
・文法及び語彙
・発音及び発声




分析!過去問題からみた通訳案内士試験の難易度

語学(外国語)には、そこそこ自信がある人でも、通訳案内士試験となると、難易度が高いような気がして合格が難しいと感じてしまう方も中にはいるようです。

通訳案内士試験が難しいと感じてしまう理由のひとつは、単純に語学力を測定するだけの試験ではないためです。

つまり、旅行ガイドとして、日本を訪れた外国人旅行者等に日本文化(地理や歴史、一般常識)を知ってもらうための知識が身に付いていなければ解答できない問題や試験科目が含まれています。

そこで、通訳案内士試験の最大の山場である〝筆記試験〟では、いったいどのような問題が出題されているのか、少し過去問題を振り返ってみましょう。
通訳案内士試験ガイドラインより
外国語 日本地理・歴史・一般常識
試験形式 記述式問題 マークシート問題(各科目とも40問程度)
試験時間 120分 各40分
出題内容

配分
概ね、外国語文の読解問題2題(配点25点程度)、外国語文和訳問題1題(15点程度)、和文外国語訳問題1題(30点程度)、外国語による説明(あるテーマ、用語等について外国語で説明する)問題1題(30点程度)を基準とする。

言語によっては、完全な多肢選択式(マークシート方式)または、多肢選択式及び記述式の組み合わせによる出題とする。後者の場合、和文外国語訳問題1題、外国語語による説明問題1題は記述式により出題するものとする。
●地理:日本の観光地等に関連する日本地理についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む)のうち、外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識で、地図や写真を使った問題が中心。

●歴史:日本の観光地等に関連する日本歴史についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む)のうち、外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識で、地図や写真を使った問題が中心。

●一般常識:現代の日本の産業、経済、政治及び文化についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む)のうち、外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識で、試験時に最新の「観光白書」や新聞(一般紙)に掲載された時事問題がベース。
英語

問1:次の語句を英語に訳しなさい。

  (1) 皇居 (2) 雪崩 (3) はしか (4) 雅楽 (5) 湯葉

問2:次の文章を英語に訳しなさい。

日本のスキー場が様変わりしている。一昔前は、週末ともなると若者がスキー場に押し寄せていたが、近年は外国人スキー客が増えてきている。特に2001年の同時多発テロ以降、北米に代わるスキー場を求めていたオーストラリア人のあいだで、日本のスキー場の人気が急速に高まった。欧州に比べて近く、時差が少ないことに加えて、日本のスキー場のさらさらの雪質も大きな魅力なのだそうだ。

日本地理

:日本の観光地に関する次の文章を読んで、各問に答えなさい。

外国人が訪れる代表的な観光コースには、(1)箱根や日光で老舗の宿泊施設で料理や温泉を満喫したり、さらに西へ足を伸ばして京都や奈良を訪れ、日本の歴史や文化について親しむことが盛り込まれている。最近では北海道や信州でスキーを楽しんだり、(2)富士山に登山をする行動派の外国人観光客も増えている …… (省略)

 (1)の箱根の観光地を代表する芦ノ湖と同じカルデラ湖はどれか、次の①~④から選びなさい。

   ① サロマ湖 ② 十和田湖 ③ 奥多摩湖 ④ 琵琶湖

 (2)の富士山は成層火山であるが、成層火山ではない山はどれか、次の①~④から選びなさい。

   ① 磐梯山 ② 鳥海山 ③ 岩手山 ④ 伊吹山

日本歴史

問1:丹波の出身と伝えられる京都の仁和寺門前に窯を開き、『色絵月梅文(図)茶壺』『色絵吉野山図茶壺』などで知られる京焼の大成者は誰か。

  ① 菱川師宣 ② 住吉具慶 ③ 土佐光起 ④ 野々村仁清 ⑤ 宮崎友禅

問2:産業・教育・文化の発展に関する次の事項のうち、明治期におこなわれていないものはどれか。

  ① 郵便開業 ② 東京・横浜間の電信敷設 ③ 文化財保護法の制定 ④ 学制発布 ⑤ 太陽暦採用


一般常識

問:外国人観光客が多く訪れる銀座には、従来は高級ブランドの路面店が多く見られたが、最近では新規出店が中止になったり、閉鎖になったりする動きがある。一方で、「ZARA」「へネス・アンド・モーリッツ」「アバクロンビー&フィッチ」「フォーエバー21」などの外資系の出店をはじめ、日本の「ユニクロ」が店舗を増床するなどの従来と異なる動きが盛んに見られる。これらのブランドの商品は、安くて気軽に入手できることに特徴がある。日本ではこのようなスタイルのブランドを総称して何と呼ばれているか。

 ① ファストカジュアル ② ファストアパル ③ シンプルモード ④ ファストファッション ⑤ シンプルファッション
解答

英語 問1
(1)tha Imperial Palace (2) avalanche / snow slide
(3) measles       (4) traditional court music
(5) soy milk skin / bean curd skin

問2 Japanese ski resorts have taken a new face. Some time ago, they used to be inundated with young skiers on weekends, but the number of foreign skiers has been increasing in recent years. After the 9-11 2001 terrorist attack on the Unaited States, in particular, ski resorts in Japan have rapidly become popular among the Australians, who were looking for alternative ski sports to the ones in North America. They say that the dry powder snow in Japanese ski resorts is very attractive to them, in addition to the shorter distance and less time difference than Europe.
日本地理 (1) ② (2) ④
日本歴史 問1 ④ 問2 ③
一般常識