気象予報士試験の難易度top
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現役の中学生が気象予報士試験に合格したということで、過去に注目されたこともありますが、このようなケースは非常に稀なケースだと思ってください。

※補足:気象予報士試験の史上最年少合格者は、2012年度に合格した12歳11ヵ月の中学1年生の男子【2009年の記録を更新(当時:13歳7ヵ月の中学1年生】。ちなみに、女性の最年少合格者は2015年度に合格した中学2年生(13歳8ヵ月)。

気象予報士試験は受験資格がないため、年齢制限はなく、興味があれば誰でも自由にチャレンジすることはできますが、試験の難易度は、一般の現役中学生が容易に解けるようなレベルではありません。

では、実際のところ、本試験問題の出題レベルはどれくらいなのか・・・?

その疑問に対し、自信を持って答えることはできませんが、これまでの試験制度や過去問題を振り返りながら、気象予報士試験の難易度について、少し客観的に分析してみることにしましょう。


受験資格 特になし
試験日 年2回 (1月/8月)
受験料 11,400円(学科1科目免除:10,400円 / 学科2科目免除:9,400円)
試験科目 学科試験 … ① 予報業務に関する一般知識  ② 予報業務に関する専門知識
実技試験 … ① 気象概況及びその変動の把握 ② 局地的な気象の予報 ③ 台風等緊急時における対応
試験形式 学科試験 … マークシート方式
実技試験 … 記述式
試験時間 学科試験 … ① 一般知識(計15問 / 60分)② 専門知識(計15問 / 60分)
実技試験 … 75分 × 2
合格基準 総得点が満点の70%以上(ただし、難易度により調整あり)
試験地 北海道、宮城、東京、大阪、福岡、沖縄
問合せ先 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-17 東ネンビル7F
一般財団法人 気象業務支援センター
TEL:03-5281-3664(試験部)

試験制度・過去問題からみた気象予報士試験の難易度 [学科試験 編]

気象予報士試験は〝学科試験〟と〝実技試験〟とに分かれますが、実技試験は学科試験が合格基準に達していないと採点対象にならないシステムを採用しているため、まずは〝学科試験〟の方からみていくことにしましょう。

気象予報士試験の学科試験は《予報業務に関する一般知識》と《予報業務に関する専門知識》とで構成されていますが、どちらの分野も多肢選択式のマークシート形式で行われます。

そのため、解答欄がまったく埋められない問題が出てくるといったことは起こりにくく、記述式問題などに比べれば受けやすい試験であるといえそうです。
学科試験 実技試験
マークシート形式 記述式
与えられた5つの選択肢の中から適切な選択肢を1つ選ぶ 指定された文字数で文章を作成したり図表に書き込む
・正誤問題・組合せ問題・計算問題 …など ・穴埋め問題・図表書き込み問題・記述問題 …など
しかし、気象予報士試験における学科試験の合格基準は、概ね7割以上(15問中、概ね11~12点)の正解率が必要とされていることから、ヤマ勘で運よく合格できるような試験ではないことが伺えます。
予報業務に関する一般知識 予報業務に関する専門知識
・大気の構造
・大気の熱力学
・降水過程
・大気における放射
・大気の力学
・気象現象
・気候の変動
・気象業務法その他の気象業務に関する法規
・観測の成果の利用
・数値予報
・短期予報、中期予報
・長期予報
・局地予報
・短時間予報
・気象災害
・予想の精度の評価
・気象の予想の応用
また、科目上〝一般知識〟とはいえ、その出題範囲は広く、気象学全般にわたって万遍なく出題されていること、下記に示した出題例にも見られるように、各選択肢の正誤判定がしっかり行えないと、正解が導き出せないような組合わせ問題なども多数出題されていることを踏まえると、一つ一つの問題自体の難易度は、それほど高くはないものの、生半可な試験対策では太刀打ちできない内容となっています。
過去問題:一般知識

問:成層圏について述べた次の文章①~⑤のうち、誤っているものを一つ選べ。

 ① 北半球高緯度の冬の成層圏において、ほとんど毎年、大きな昇温が急激に起こる現象が観測される。
 ② 赤道付近の成層圏では、西風と東風が約2年の周期で交互にあらわれる現象が観測される。
 ③ 大気中のオゾンは、低緯度の成層圏で量も多く生成され、中高緯度へと輸送される。
 ④ 一般に、成層圏における温位の鉛直方向の傾度は、対流圏に比べて小さい。
 ⑤ 平均的にみると、対流圏界面の高度は、高緯度帯より熱帯の方が高い。


問:大規模な大気現象について述べた次の文(a)~(c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から一つ選べ。

(a)総観規模の大気現象では静力学平衡がよい近似で成り立つ。静力学平衡では、鉛直方向の運動方程式において鉛直加速度と鉛直気圧傾度力がバランスしている。

(b)自由大気中の台風の循環では傾度風平衡がよい近似で成り立つ。傾度風平衡では、コリオリ力と遠心力の和が気圧傾度力とバランスしている。

(c)静力学平衡にある大気中において、気温の水平傾度があるために地衡風が高度とともに変化していることを温度風の関係という。温度風の関係は対流圏に特有のもので、高度約10kmから110kmの中層大気には見られない。

  (a)(b)(c)
 ① 正 正 誤
 ② 正 誤 正
 ③ 誤 正 誤
 ④ 誤 誤 正
 ⑤ 誤 誤 誤

【平成28年度 第1回 気象予報士試験より】

問:水蒸気を含む未飽和空気塊が凝結せずに上空に上昇するとき、その空気塊の相対湿度、水蒸気密度、比湿それぞれの変化の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から一つ選べ。

  (相対湿度)(水蒸気密度) (比湿)

 ① 増加する  増加する   増加する
 ② 増加する  減少する   一定である
 ③ 一定である 一定である  減少する
 ④ 減少する  増加する   増加する
 ⑤ 減少する  減少する   一定である

【平成28年度 第2回 気象予報士試験より】
一方、専門知識分野の方はというと、試験時間や出題問題数に関しては、一般知識分野と変わりありませんが、天気図の読み取りや予報をはじめ、各現象の分析など、より実践的な問題が出題される傾向が強いようです。

したがって、一般知識問題よりも、さらに理解力が重視されるため、過去問やテキストを、ただ丸暗記型しただけの勉強法では思うように得点は稼げないことが予想されます。
過去問:専門知識

問:気象庁が提供している数値予報プロダクトについて述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から一つ選べ。

(a)数値予報プロダクトの格子点値は、格子点に対応する地点の値をピンポイントで表しているのではなく、その格子点付近の空間の代表的な値を表している。

(b)数値予報プロダクトとして出力される降水量は、予想対象時刻における降水強度を表している。

(c)数値予報プロダクトとして出力される地上気温は、モデル大気の最下層の標高と実際の地表面の標高の差に基づいて、モデル最下層の気温を高度補正した値である。

   (a) (b) (c)
 ① 正  正  誤
 ② 正  誤  正
 ③ 正  誤  誤
 ④ 誤  正  正
 ⑤ 誤  誤  誤

【平成28年度 第2回 気象予報士試験より】

問:気象庁のメソモデルで計算される次の量A~Dのうち、パラメタリゼーションにより計算される量の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から一つ選べ。

A.様々な雲からの赤外放射にともなう加熱量・冷却量
B.コリオリ力による風の変化量
C.大気下層の乱流による顕熱・潜熱の輸送量
D.水平移流による気温の上昇量・下降量

 ①  A
 ②  A、C
 ③  B、D
 ④ C、D
 ⑤ A、B、C、D

【平成28年度 第1回 気象予報士試験より】

問:台風による災害について述べた次の文章(a)~(d)の正誤について、下記の①~⑤の中から正しいものを一つ選べ。

 (a) 台風が日本付近で温帯低気圧に変わると、強風域が拡がり中心から遠く離れた地域で風害が発生する場合がある。

 (b) 台風に伴う強風や暴風は、地形の影響によって予想された以上の風速になる場合があるため、地域の風の特性を知ることが防災対策上重要である。

 (c) 台風域で発生したうねりは、波長が長く減衰しにくいため遠く離れた海域まで伝播するので、台風が遠方にある場合でもうねりに対する警戒は必要である。

 (d) 台風に伴って海上から陸上に向かって強い風が吹くと、海水の飛沫が陸上の地物や電線などに付着して被害が発生することがあるが、一般に降水量が少ないときほど被害の程度は小さい。


 ① (a)のみ誤り  ② (b)のみ誤り  ③ (C)のみ誤り  ④ (d)のみ誤り  ⑤ すべて正しい





試験制度・過去問題からみた気象予報士試験の難易度 [実技試験 編]

気象予報士試験の最大の山場は〝学科試験〟よりも〝実技試験〟の方にあると言われています。

というのも、実技試験は文章や図表を用いた記述式の解答方法が用いられているため、単に知識があるというだけでは足らず、指定された字数制限(10~50字程度)を目安に、自分の言葉でポイントを押さえながら文章を簡潔にまとめあげる能力が求められるからです。

そのため、気象予報士試験は理系出身者の方が有利であるとも言われていますが、どちらかというと理系出身者は文系出身者に比べると、この手の記述式試験を苦手とする人も多いことから、理系出身者の中には試験の難易度が高いと感じている人も少なくないようです。

つまり、気象予報士試験は、必ずしも理系出身者に有利な国家試験であるとは言えない!ということです。

さて、気になる本試験問題の中身ですが、実技試験は、概ね下記に示す3科目が出題範囲となっています。
試験科目と主な出題内容
気象概況及びその変動の把握 衛星画像・高層天気図などを基に、気象概況や今後の推移や現象について予測する。
局地的な気象の予報 具体的な事例を基に、局地的な気象予報についての能力を問う。
台風等緊急時における対応 台風等の来襲により予想される災害に対し、適切に対応する能力があるかを問う。
実技試験は、与えられる複数の天気図や画像データを正確に読み取り、各設問が求めている解答を簡潔に記述しなければならないため、実践的な能力と文章力が問われる難易度の高い試験です。

また、穴埋め問題なども出題されますが、字数制限による文章記述問題や計算問題も少なくないため、学科試験よりも15分ほど長い試験時間(75分×2)とはいえ、時間に追われる受験者も少なくないようです。

したがって、この手の記述式問題に対処するには、日頃から過去問題や演習問題を数多くこなし、問題慣れしておくことが大切です。

ちなみに、独学ではちょっと不安かもという方はユーキャンのような通信講座の利用を検討してみるのも一法かもしれません。