ITパスポート試験の難易度top
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ITパスポート試験は、平成21年度の春期試験をもって廃止された初級シスアド試験の一部を引き継ぐ形でスタートしています。

そのため、歴史が浅く、試験に間するデータがまだ少ないというのが現状ですが、受験者にとって試験の難易度はとても気になるところです。

ITパスポート試験の難易度が、どれほどのものなのかを知る上で、よく(旧)初級シスアド試験が引き合いに出されますが、ITパスポート試験と旧初級シスアド試験とでは、その試験制度(内容)が異なってきます。

確かに、これまでの試験問題や試験結果を振り返ってみると、ITパスポート試験の方が旧初級シスアド試験よりも難易度が低いような印象(つまり、合格しやすい)を受けますが、どういった面で低いと感じられるのか、もう少し客観的に分析してみることにしましょう。



考察その① 試験制度から読み取るITパスポート試験の難易度

ITパスポートと初級シスアドの違い旧初級シスアド試験とITパスポート試験とでは、主に右記表に示すような点で違いが見られますが、特に両試験の大きな違いは試験構成にあると言えるかもしれません。

旧初級シスアド試験では、これまで午前の部・午後の部に分けて行われてきましたが、新たに創設されたITパスポート試験は午前中のみの試験で終了するため、試験時間が大幅に短縮されています。

※ 平成24年11月以降は、CBT方式(パソコンを利用した試験方式で、マウスやキーボードを使って解答)を導入したため、試験回数は大幅に増えましたが、地域により、開催回数や試験開始時間が異なります。

また、旧初級シスアド試験における午後の部は、出題される大問すべてが長文問題であり、いくら専門知識があっても、文章読解力が伴っていなければ対処できない問題で構成されていたことから、問題の主旨や意図を素早く把握できない受験者にとっては難易度の高い試験と感じられたようです。

一方、ITパスポート試験においては、中問という形で数問出題されますが、こちらは旧初級シスアド試験ほど国語力(読解力)は求められてはいないので、解答しやすいといえるでしょう。

しかし、試験時間が短くなったとはいえ、ITパスポート試験は休憩をはさまずに3時間近い(165分:間に休憩がない!という点では初級シスアド試験よりも15分増し)試験が通しで行われるので、試験問題の難易度についてどうこう言う前に、集中力をいかに持続させることができるかが合否の鍵を握ってきそうです(集中力を切らすと、本来、解答できたであろう問題もケアレスミスが起こりやすくなる)。

また、ITパスポート試験は旧初級シスアド試験と同じく、四肢択一式のマークシート形式で出題されます。

ITパスポート試験の過去問を振り返ってみると、大半の問題は正誤問題や組み合わせ問題として出題されていますが、稀に下記に挙げるような問題も出題されています。
サービステスクのインシデント管理に関する評価指標①~③のうち、適切なものだけを全て挙げたものはどれか。

 ① SLAで定められた目標対応時間内に対応が完了したインシデントの割合
 ② インシデン卜の平均解決時間
 ③ 対応が終了していないインシデン卜の割合


         ア ①,②  イ ①,③  ウ ②,③  エ ①,②,③
このような問題が出題された場合は、正誤問題以上により正確な知識がないと自信を持って解答することができないので、内容にもよりますが難易度の高い難問!といってよいでしょう。

しかし、次で述べますが、ITパスポート試験の合格基準は緩めに設定されているので、出題数の少ないこの手の難問は解答できなくても合否に影響することはありません。
合格基準からみた試験の難易度
この手の択一式マークシート試験においては、合格基準をどの程度のラインに設定するかで合否者の増減数が大きく変動してきますが、ITパスポート試験の合格基準は80%でもなければ70%でもなく、60%という比較的緩めのラインが設定されています。

この点を踏まえると、計算上40問間違えても不合格になることはないので、多少のケアレスミスは合否に影響しません。

ただし、ITパスポート試験の合格条件には注意すべき点が1点あります。

それは、各分野ごとに最低ラインが設けられていることです。
■ 総合得点:600点以上(1,000点満点中)

■ 分野別特典:分野別満点の30%以上

 ・ストラテジ系 …… 105点以上(350点満点)
 ・マネジメント系 … 75点以上(250点満点)
 ・テクノロジ系 …… 120点以上(400点満点)
したがって、極端に苦手な分野を作らず、ある程度バランスのとれた試験対策を行い、各分野ごとに設けられた最低ラインをクリアしなければならないので、苦手分野のある受験者にとっては、やや難易度の高い試験であると感じられる人もいるかもしれませんが、分野別の足きりラインは、あくまで30%未満という非常に低いラインなので、それほど心配する必要はないでしょう。


考察その② 出題範囲から読み取るITパスポート試験の難易度

ITパスポートという名称から、パソコンをはじめとしたコンピュータ関連の基本的な仕組みや知識、インターネットや電子メール等に関する問題が中心の資格試験と思われがちですが、ITパスポート試験は、経営全般にかかわる知識やマネジメントに関する問題も多く、この2分野を合わせると本試験問題の約6割を占めているのが特徴のひとつです。
出題範囲
分野 大分類 中分類 出題範囲(出題の考え方)





企業と法務 企業活動 ・企業活動や経営管理に関する基本的な考え方を問う。
・身近な業務を分析し、課題を解決する手法や、PDCAの考え方、作業計画、パレート図などの手法を問う。
・業務フローなど業務を把握する際のビジュアル表現について問う。
・財務諸表、損益分岐点など会計と財務の基本的な考え方を問う。
法務 ・知的財産権(著作権/産業財産権など)、個人情報保護法、労働基準法、労働者派遣法など、身近な職場の法律を問う。
・ライセンス形態、ライセンス管理など、ソフトウェアライセンスの考え方、特徴を問う。
・コンプライアンス、コーポレートガバナンスなど、企業の規範に関する考え方を問う。
・標準化の意義を問う。
経営戦略 経営戦略
マネジメント
・SWOT分析、プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)、顧客満足度、CRM、SCMなどの代表的な経営情報分析手法や経営管理システムに関する基本的な考え方を問う。
・表計算ソフト、データベースソフトなどオフィスツール(ソフトウェアパッケージ)の利用に関する理解を問う。
技術戦略
マネジメント
・技術開発戦略の意義、目的などに関する理解を問う。
ビジネス
インダストリ
・電子商取引、POS システム、IC カード・RFID応用システムなど、各種ビジネス分野での代表的なシステムの特徴を問う。
・エンジニアリング分野や電子商取引での代表的なシステムの特徴を問う。
・情報家電や組込みシステムの特徴,動向などを問う。
システム戦略 システム戦略 ・情報システム戦略の意義と目的、戦略目標、業務改善、問題解決などに向けた考え方を問う。
・業務モデルにおける代表的なモデリングの考え方を問う。
・コミュニケーションにおけるグループウェアやオフィスツールなどの効果的な利用について問う。
・コンピュータ及びネットワークを利用した業務の効率化の目的、考え方について問う。
・代表的なサービスを通じて、ソリューションの考え方を問う。
・システム活用促進・評価活動の意義と目的を問う。
システム企画 ・システム化計画の目的を問う。
・現状分析などに基づく業務要件定義の目的を問う。
・見積書、提案依頼書(RFP)、提案書の流れなど調達の基本的な流れを問う。






開発技術 システム
開発技術
・要件定義、システム設計、プログラミング、テスト、ソフトウェア保守などソフトウェア開発のプロセスの基本的な流れを問う。
・ソフトウェア開発における見積りの考え方を問う。
ソフトウェア
開発管理技術
・代表的な開発手法に関する意義や目的について問う。
プロジェクト
マネジメント
プロジェクト
マネジメント
・プロジェクトマネジメントの意義、目的、考え方、プロセス、手法を問う。
サービス
マネジメント
サービス
マネジメント
・IT サービスマネジメントの意義、目的、考え方を問う。
・ヘルプデスクなど関連項目に関する理解を問う。
・コンピュータやネットワークなどのシステム環境整備に関する考え方を問う。
システム監査 ・システム監査の意義、目的、考え方、対象を問う。
・計画、調査、報告など、システム監査の流れを問う。
・内部統制、IT ガバナンスの意義、目的、考え方を問う。





基礎理論 基礎理論 ・2進数の特徴や演算、基数に関する基本的な考え方を問う。
・ベン図などの集合、確率や統計に関する基本的な考え方を問う。
・ビット、バイトなど、情報量の表し方や、ディジタル化の基本的な考え方を問う。
アルゴリズムと
プログラミング
・アルゴリズムとデータ構造の基本的な考え方、流れ図の表現方法を問う。
・プログラミングの役割を問う。
・HTML、XMLなどのマークアップ言語の種類とその基本的な使い方を問う。
コンピュータ
システム
コンピュータ
構成要素
・コンピュータの基本的な構成と役割を問う。
・プロセッサの性能と基本的な仕組み、メモリの種類と特徴を問う。
・記録媒体の種類と特徴を問う。
・入出力インタフェース、デバイスドライバなどの種類と特徴を問う。
システム
構成要素
・システムの構成、処理形態、利用形態の特徴を問う。
・クライアントサーバシステムの特徴を問う。
・Webシステムの特徴を問う。
・システムの性能・信頼性・経済性の考え方を問う。
ソフトウェア ・OSの必要性、機能、種類、特徴を問う。
・アクセス方法、検索方法など、ファイル管理の考え方と基本的な機能の利用法,バックアップの基本的な考え方を問う。
・オフィスツールなどソフトウェアパッケージの特徴と基本操作を問う。
・オープンソースソフトウェア(OSS)の特徴を問う。
ハードウェア ・コンピュータの種類と特徴を問う。
・入出力装置の種類と特徴を問う。
技術要素 ヒューマン
インタフェース
・GUI、メニューなど、インタフェースの設計の考え方、特徴を問う。
・Webデザインの考え方を問う。
・ユニバーサルデザインの考え方を問う。
マルチメディア ・JPEG、MPEG、MP3など、符号化の種類と特徴を問う。
・Virtual Reality(VR)、Computer Graphics(CG)など、マルチメディア技術の応用目的や特徴を問う。
・情報の圧縮と伸長、メディアの特徴を問う。
データベース ・データベース及びデータベース管理システム(DBMS)の意義、目的、考え方を問う。
・データの分析・設計の考え方、データベースのモデルの特徴を問う。
・データの抽出などの操作方法を問う。
・排他制御、リカバリ処理など、データベースの処理方法を問う。
ネットワーク ・ネットワークに関するLANやWANの種類と構成、インターネットやLANの接続装置の役割を問う。
・通信プロトコルの必要性、代表的なプロトコルの役割を問う。
・インターネットの特徴と基本的な仕組みを問う。
・電子メール、インターネットサービスの特徴を問う。
・モバイル通信、IP電話など、通信サービスの種類と特徴、課金、伝送速度などに関する理解を問う。
セキュリティ ・ネットワーク社会における安全な活動の観点から情報セキュリティの基本を問う。
・情報資産とリスク管理の目的、情報セキュリティポリシの考え方を問う。
・ウイルス対策などの技術的セキュリティ対策の考え方、種類と特徴を問う。
・入退室管理やアクセス管理など、物理的・人的セキュリティ対策の考え方、種類と特徴を問う。
・ID・パスワード、コールバック、ディジタル署名、生体認証技術など、認証技術の種類と特徴を問う。
・公開鍵、秘密鍵など、暗号化技術の仕組みと特徴を問う。
そのため、出題範囲はそれなりに広い試験ですが、下記に示す出題例(過去問)にも見られるように、ITパスポート試験における大半の問題は、いずれも初歩的な知識や理解力が問われる問題で構成されているので、基本書を読んで、過去問をある程度解いている方にとっては、試験問題自体の難易度はそれほど高く感じないはずです。

したがって、あくまで試験合格することが目的であるならば、広く浅く学習する勉強方法が基本となってくるでしょう。
問1:他社が開発した先進的な技術と、高い研究能力を持った人材を、自社固有の経営資源として取り込むことが可能な戦略はどれか。

  ア.M&A  イ.R&D  ウ.アライアンス  エ.技術提携

問2:次の損益計算書から求められる営業利益は何百万円か。
売上高 7,500
売上原価 6,000
販売費及び一般管理費 1,000
営業外収益 160
営業外費用 110
特別利益 20
特別損失 10
法人税等 260
  ア.300  イ.500  ウ.550 エ.1,500

問3:サービスサポートにおける管理機能のうち、ハードウェア、ソフトウェアといったIT資産を網羅的に洗い出し、IT資産の管理台帳に記録し管理するものはどれか。

  ア.インシデント管理  イ.構成管理  ウ.問題管理  エ.リリース管理

問4:プロジェクトにおける開発予算に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。

 ア.開発計画は総開発予算に基づき作成するものなので、個々の作業ごとの見積りを積算して計画してはならない。
 イ.開発予算と実績の差異を監視し、必要に応じて計画変更を行う。
 ウ.開発予算は直接資材調達に対するもので、プロジェクトに参加する社員の人件費は含めない。
 エ.類似プロジェクトの有無にかかわらず、ファンクションポイント法を用いて詳細な見積もりを行う。

問5:電車の定期券などとして利用される非接触型ICカードに用いられている技術はどれか。

   ア.IrDA  イ.RFID  ウ.バーコード  エ.無線LAN
問6(中問):事業戦略立案に関する次の記述を読んで、問①~④に答えよ。

健康食品メーカのS社の企画部では、健康菓子事業の戦略立案を進めており、自社の状況を、SWOT分析での強み、弱み、機会、脅威に分類して認識し、探るべき戦略を検討して二つの方針案を作成した。S社の状況と方針案の概要は、次のとおりである。

《S社の状況》

  (1) 営業拠点数が他社よりも少ない。
  (2) 競合するT社の健康菓子事業の撤退が決まった。
  (3) 競合他社よりも高い企画力をもっている。
  (4) 健康志向の高まりで、健康食品への関心が高まっている。
  (5) 工場の老朽化が進んでいる。
  (6) 少子化によって子供の人口が減少している。
  (7) 食品の安全性に対する消費者の目が厳しくなっている。
  (8) 顧客の会員化によって顧客情報が集まり、富裕層の会員獲得にも成功している。

《方針案の概要》

  方針案1:強みを更に伸ばすために、情報システムを強化する。
  方針案2:自社の事業の拡大を図るために、T社が撤退する事業を買収する。
  ここ数年の健康菓子の市場シェアは、Q社25%、R社16%、S社12%、T社10%、その他37%である。

問①:[S社の状況]を次のようなマトリックスで整理する。[S社の状況]の(1)と(2)を図のa~dに分類するとき、適切な組合せはどれか。
有利な面 不利な面
内部環境 a b
外部環境 c d
(1)を入れる場所 (2)を入れる場所
b c
b d
d c
d d
問②:[S社の状況]の中で強みに分類されるものとして、適切な組合せはどれか。

  ア.(1)と(5)  イ.(2)と(4)  ウ.(3)と(8)  エ.(6)と(7)

問③:方針案1に沿って、強みを更に伸ばすための方策に関する記述として、適切なものはどれか。

 ア.営業拠点数の影響を受けにくいインターネットによる通信販売システムを導入する。
 イ.顧客の購買データを分析して、会員にきめの細かいサービスを提供するために、CRMシステムを構築する。
 ウ.商品の生産工程における安全管理を徹底するために、生産管理システムの刷新を図る。
 エ.成人向け健康菓子の企画に際して、各地域の人口分布に関する統計データを分析することを目的として、POSシステムを導入する。

問④:方針案2を進めた場合、[S社の状況]の(1)と(5)に対処することができ、T社が占めていた市場シェアをほぼ確保できる見込みである。市場シェアに基づいて次の表のような戦略を採った場合、買収後のS社の戦略に関する記述として、適切なものはどれか。
市場シェア 採る戦略
市場シェアが1位の企業 市場全体の規模拡大
市場シェアが2位の企業 自社の強みで他社を攻撃
市場シェアが3位以下だが、特定商品のシェア1位の企業 特定ニーズへの適応
上記以外 模倣によるコストの節約
 ア,Q社の人気商品に類似した健康菓子を商品化し、Q社よりも低価格で販売する。
 イ.アレルギーに配慮した健康菓子の生産に特化して、高価格、高収益を目指す。
 ウ.広告などによって人々の健康志向を高め、健康菓子の需要そのものを増やす。
 エ.商品企画に関連する部門に資金を投入して、競争力の優れた商品を企画し、販売する。


過去問題:H22年度 春期試験より一部抜粋
なお、ITパスポート試験で出題された問題は公式サイトで公開されているので、本試験問題の難易度が気になる方は、一度、公式サイトで過去問をチェックしてみることをお勧めします。

解答

問1
問2
問3
問4
問5
問6 ①ア ②ウ ③イ ④エ