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矢印これだけは押える!ガス主任技術者丙種試験の特徴と注意点

矢印過去問からわかるガス主任技術者丙種試験の難易度
ガス主任技術者の資格を得るには、指定試験機関である一般財団法人・日本ガス機器検査協会が実施するガス主任技術者試験に合格しなければなりませんが、同国家試験は区分(免状の種類)によって難易度が変わってきます。
甲種 ガス工作物の工事、維持及び運用
乙種 最高使用圧力が中圧及び低圧のガス工作物並びに特定ガス発生設備等に係るガス工作物等の工事、維持及び運用
丙種 特定ガス発生設備に係るガス工作物の工事、維持及び運用
中でも最も簡単と言われているのが丙種ですが、その丙種でさえも合格率は思いのほか低く、楽に合格できるような試験ではありません。

そこで、実際、どれくらい難しい試験なのか・・・?

今回は受験者の多い丙種試験の特徴や難易度、合格するための攻略ポイントについてザッとまとめておくので、これから資格取得に向けて勉強に取り掛かるつもりでいたビギナー受験者は少し参考にしてみてください。





これだけは押える!ガス主任技術者丙種試験の特徴と注意点

まずはこちらのグラフをご覧ください。
丙種:合格率の推移グラフ
ガス主任技術者丙種の合格率に関するデータですが、最も易しい試験と言われているわりには低水準で推移(過去5年間の平均値:26.0%)しており、計算上、毎年10人中7~8人が不合格となっていることから、合格率からも決して簡単に合格できるような試験でないことがうかがえます。
論述問題が合否の鍵を握る!
では、合格率を大幅に下げている要因は何かというと、やはりそれは記述式の論述問題の影響が大きいといえるでしょう。

ガス主任技術者試験は、資格区分(甲・乙・丙)問わず、記述式の論述問題が出題されますが、論述問題は択一式のマークシート問題とは違い、予め正解が用意されているわけではないため、ある程度の専門知識がないと答えることができません(つまり、文章が書けない!)。

また、出題者の意図を読み取り、制限時間内に簡潔にまとめる文章力なども要求されるため、論述問題が出題される試験は、ガス主任技術者試験に限らず、たいてい合格率が低くなる傾向が見られます。
独特の解答方法に要注意!
ガス主任技術者丙種試験は、午前(マークシート問題)と午後(論述問題)に分けて行いますが、マークシート問題の出題問題数と配点は次のとおりです。
法令 基礎 ガス技術
出題数 16問 15問 27問
解答数 16問 10問 20問
配点 各5点
得点 80点 50点 100点
同試験は少し独特な解答方法を採用しており、「法令」を除く科目(「基礎」「ガス技術」)は選択制となっています。

つまり、用意された問題の中から指示された解答数だけ答える(例:「基礎」科目は15問中10問の問題を解く)ことになるため、見方によっては自分が確実に解ける問題から順に解答欄にマークをしていくことができるといった利点がありますが、一方で、指示された問題数以上の解答欄をマークしてしまうと、減点にはならないものの、採点対象とはならない(問題番号の若い順から採点するシステム)点に注意が必要です。

したがって、すべての問題が自信をもって答えられるならまだしも、分からない問題が含まれている場合は、必ず指定された解答数の解答欄にマークするようにしてください(でないと、自信がなかった問題の解答が採点対象となってしまう恐れがある!)。

※補足:1つの問題にうっかり2つ以上マークしてしまった場合、その問題は0点となります。また、独特の解答方法なので、一般的なマークシート試験よりも、問題と解答欄のマークが一致しない(ズレる)ケアレスミスが起こりやすいので、解答し終わったら必ず見直すこと!
足切りラインがある!
ガス主任技術者丙種試験は、午前のマークシート問題と午後の論述問題で構成されているということは先に説明したとおりですが、試験に合格するには合格基準を満たす得点を稼がなければなりません。

その合格基準というのがこちらです。
次の各項のすべてを満たす者を合格者とする。

1.マークシート問題及び論述問題の合計得点(300点満点)が180点以上であること。
2.マークシート問題の法令科目(80点満点)の得点が25点以上であること。
3.マークシート問題の基礎科目(50点満点)の得点が15点以上であること。
4.マークシート問題のガス技術科目(100点満点)の得点が30点以上であること。
5.論述問題(70点満点)の得点が20点以上であること。
ご覧のように、単に「マークシート問題」と「論述問題」の得点を足した合計点だけで合否判定するのではなく、それぞれの科目や論述問題に最低点(いわゆる、足切りライン)が設けられています。

つまり、総得点が合格基準を満たしていても、足切りライン(ただし、どの科目も概ね3割以上の得点と比較的、緩めの設定…)に引っ掛かると不合格となってしまうため、不得意科目もある程度克服した上で本試験に臨まなければ合格が厳しくなります。


過去問からわかるガス主任技術者丙種試験の難易度

試験問題を見れば、ガス主任技術者丙種試験の難易度を、ある程度把握することができます。

そこで、過去問を基に丙種試験の出題レベルや出題パターン、近年の傾向について分析してみましょう。
午前:マークシート問題
試験慣れしていないビギナー受験者でも解答しやすいのが、午前中(2時間)に行われるマークシート問題です。

本試験は、5つの選択肢の中から適当な選択肢を選ぶ択一式のマークシート試験ですが、過去問を分析してみると、試験科目によって出題パターンに特徴があることがわかります。
H28年度 H29年度
法令 基礎 ガス技術 法令 基礎 ガス技術
正誤 --- 3問 --- 1問 2問 ---
× 5問 4問 22問 5問 6問 22問
組合せ 3問 --- 1問 5問 --- ---
穴埋め+組合せ 6問 2問 3問 4問 --- 5問
個数 2問 --- --- 1問 --- ---
計算 --- 6問 1問 --- 7問 ---
そこで、試験科目ごとに、その特徴についてまとめてみました。

「法令」科目

特徴:出題パターンが最も豊富な科目(計算問題はない)。

難易度と勉強法:過去問を分析してみると、毎年、同じような問題が繰り返し出される類似問題が目立つため、学習時間に限りがある受験者は、過去問を中心とした勉強法(分からない個所は、その都度、テキストで確認)が効率的で有効。

しかし、近年の傾向として、正誤問題や個数問題などは、思いのほか細かな知識が問われたり、紛らわしい引っ掛け問題も見られる(といっても、所詮は丙種なので、それほど高度な知識は問われない)ため、正確な知識をいかに整理して頭にインプットし、本番で引き出すことができるかが合否の鍵を握ってくる(つまり、得点を稼げる)。
過去問題:法令

〈例:組合せ問題〉

技術基準で規定されているガス工作物に関する次の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。ただし、気化装置とは、液化ガス(不活性のものを除く。)を気化する装置をいう。

イ.気化装置は、直火で加熱する構造のものであってはならない。

ロ.温水で加熱する構造の気化装置であって、加熱部の温水が凍結するおそれのあるものには、これを防止する措置を講じなければならない。

ハ.気化装置又はそれに接続される配管等には、気化装置からの液化ガスの流出を考慮した設計である場合においても、気化装置から液化ガスの流出を防止する措置を講じなければならない。

ニ.低圧の特定ガス発生設備であって過圧が生じるおそれのあるものには、その圧力を逃がすために適切な圧力上昇防止装置を設けなければならない。

ホ.ガスの使用者及びガスを供給する事業を営む者に供給されるガス(ガスを供給する事業を営む者に供給されるものにあっては、低圧により供給されるものに限る。)は、容易に臭気によるガスの感知ができるように、付臭されていなければならない。ただし、技術基準に規定された場合にあっては、この限りでない。


(1)イ、ロ (2)イ、ニ (3)ロ、ホ (4)ハ、ニ (5)ハ、ホ

〈例:穴埋め+組合せ問題〉

ガス事業法に関する次の記述について、[  ]の中の(イ)~(ホ)にあてはまる語句の組合せとして正しいものはどれか。

[(イ)]は、事故によりガスの供給に支障を生じている場合に簡易ガス事業者がその支障を除去するために必要な[(ロ)]その他の措置をすみやかに行わないとき、簡易ガス事業者が第40条の2第2項の規定による[(ハ)]若しくは同条第3項の規定による[(ニ)]をせず、又はその[(ハ)]若しくは[(二)]の方法が適当でないとき、その他そのガスの供給の業務の方法が適切でないため、ガスの[(ホ)]の利益を阻害していると認めるときは、簡易ガス事業者に対し、その供給の業務の方法を改善すべきことを命ずることができる。

    (イ)    (ロ) (ハ) (二)  (ホ)

(1)経済産業大臣   修理  調査  通知  使用者
(2)ガス主任技術者  廃棄  届出  通知  使用者
(3)経済産業大臣   修理  届出  通知  販売者
(4)ガス主任技術者  修理  届出  表示  使用者
(5)経済産業大臣   廃棄  調査  表示  販売者

〈例:個数問題〉

次の設備のうち、法令で規定する特定ガス工作物に該当するものはいくつあるか。

イ.特定ガス発生設備の設置場の屋根
ロ.調整装置
ハ.気化装置
ニ.集合装置
ホ.ガス事業法施行令第1条に規定する容器


(1)1 (2)2 (3)3 (4)4 (5)5




「基礎」科目

特徴:計算問題の占める割合が多い科目(試験によって変動はあるが、文章問題と計算問題の割合は概ね5:5)。

難易度と勉強法:計算問題が出るというだけで、苦手意識を持つ受験者(特に文系出身)も多いが、丙種は甲種・丙種に比べると試験範囲が狭く、それほど高い学力が求められているわけではない(高校レベル程度)ため、論述問題やガス技術科目で思うような得点が稼げなかった場合のリスクを考慮すると、はじめから捨て問題にしてしまうのはもったいない。

過去問を分析してみると、丙種は類似問題も多く、狙われやすい基本公式と解法さえしっかりマスターしておけば、解答できてしまう問題もあるため、計算問題を苦手とする受験者は、類似問題の基本公式と解法だけでも押えて本試験に臨む方が賢明。

一方、文章問題は正誤問題が目立つが、「法令」科目や「ガス技術」科目に比べると、比較的、難易度は抑えらえているので、論述問題や計算問題を苦手とする受験者は「基礎」科目をしっかりと学習し、得意科目(高得点を狙う)にしたいところ。
過去問題:基礎

〈例:計算問題〉

温度27℃の理想気体1㎥を、圧力を一定に保ち227℃に温度上昇させたときの体積(㎥)として、最も近い値はどれか。

(1)0.6 (2)1.0 (3)1.7 (4)2.6 (5)8.4

プロパン60vol%、ブタン40vol%の混合ガスの比重(空気を1とする)として、最も近い値はどれか。ただし、空気の分子量相当数を29とする。

(1)1.0 (2)1.2 (3)1.5 (4)1.7 (5)2.0


「ガス技術」科目

特徴:正誤問題の占める割合が圧倒的に多い科目。

難易度と勉強法:ガス技術は「製造」「供給」「消費」の3つの分野に分かれ、各分野9問、計27問の問題が用意されており、受験者はそのうち20問を選択解答することになる(先に説明したとおり、20問以上解答すると、番号の若い順から採点されてしまうため、要注意!)。

過去問を分析してみると、分野によって難易度に差があるようで、製造や供給に比べると、消費は問題レベルが平均して高く難しいことが多く、得点が稼ぎづらい分野となっている(現場経験のあるなしに左右されることも…)。

「法令」科目や「基礎」科目に比べて難易度が高く、過去に例がないような問題も出ているため、過去問をマスターしただけでは対応しきれない問題もちらほら出題されており、また、問題の大半が正誤問題として出題されるが、「正しいもの」ではなく「誤っているもの」を選ばせる問題が多いのも特徴のひとつ。

誤っている箇所を探すというのは、正しいものを選ばせるパターンよりも迷うことが多いため、問題の難易度を上げている要因にもなっている(また、細かな知識が問われる問題も目立つ)。

そのため、高得点は狙いにくい科目なので、全体に占める得点こそ高い(マークシート試験:230点満点中100点)が、試験に合格することを最優先とするなら、あまり深入りしすぎるのは禁物(他科目を既にマスターしていたり、時間に余裕があるなら別)!
過去問題:ガス技術

〈例:正誤問題〉

バルク貯槽に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。


(1)貯槽内圧力が許容圧力を超えた場合、直ちにその圧力を許容圧力以下に戻すことができる安全弁を設けた。

(2)液面計には一般にフロート式や放射線式が用いられる。

(3)貯蔵能力に対応する容量以下の設定値で充てんを停止する過充てん防止装置を設けた。

(4)カップリング用液流出防止装置を取付けた液取入弁を設けた。

(5)バルクローリーとバルク貯槽の均圧用に均圧弁を設けたので、カップリングを取付けた。

午後:論述問題
午後に待ち受けている試験が記述式の論述問題です。

得点の占める割合は高くありませんが(総得点300点満点中70点)、足切りラインがあるため、油断ならない分野と言えるでしょう。

では、具体的にどんな問題が出題されているのか気になるところですが、問題の難易度や特徴を掴む前に、まずは本試験で実際に出題された問題(平成29年度)をご覧ください。
過去問題:論述

〈法令〉

①ガス事業法令における「ガス主任技術者制度」に関する規定の内容を述べよ。

②ガス事業法におけるガス工作物の保安の確保のための規制の態様には、「国が行う行政措置」、「ガス事業者の保安責務」及び「所有者又は占有者の協力責務」がある。このうち「ガス事業者の保安責務」に関する規定の要点を簡潔に述べよ。ただし、①に関する者は除く。

〈ガス技術〉

問題1:製造

50kg容器による自然気化ガス発生設備に関して、以下の項目について述べよ。

(1)構成設備とそれぞれの機能
(2)構成設備ごとに維持管理のために必要な巡視、点検の内容と頻度

問題2:供給

道路上でのガス導管(本支管)埋設工事(非開削工事を除く。)における自社工事事故(供給支障事故を除く。)の防止に関し、以下の4項目についてそれぞれ述べよ。

(1)工事着手前(工事計画、着工準備)段階において留意すべき事項
(2)土木工事(掘削、埋め戻し)段階において留意すべき事項
(3)火災・爆発事故防止のため、配管工事(連絡工事、ガス開通を含む。)段階において留意すべき事項
(4)酸素欠乏事故防止のため、配管工事(連絡工事、ガス開通を含む。)段階において留意すべき事項

問題3:消費

業務用厨房で使用されるガス消費機器の燃焼排ガス中の一酸化炭素による中毒事故について、想定される原因と事故を防止するためにガス小売事業者が留意すべき事項を具体的に複数述べよ。



論述問題を解く上で、まず押えておきたいことは、「法令」問題は受験者全員が解答しなければならない必須問題となっていますが、「ガス技術」に関する問題は選択制で、「製造」「供給」「消費」の3問の中から1問選択して解答する形になります。

配点は「法令」「ガス技術」ともに35点で、計70点満点となりますが、足切りラインがあるため、20点以上の得点を稼がなければ、マークシート問題で高得点を上げても不合格なってしまう点に注意が必要です。

気になる論述問題の内容(難易度)については、「法令」と「ガス技術」に分けてまとめておきます。

「法令」問題

数年分の過去問をチェックしてみれば気付くことだが、文章(設問)は異なるものの、問われている内容は、ある程度パターン化されており、法令が設けられた目的や義務、規定に関する内容について述べる問題が多い。

本試験では、同じような問題が繰り返し出されたり、いくつかのパターンを組み合わせて出題しているので、過去に出題された論点を中心に基礎固めを行っておけば、ある程度、安定した得点が稼げるため、「ガス技術」に比べると試験対策が立てやすい科目である。

「ガス技術」問題

「法令」問題に比べると、新しい問題が出たり、予期せぬマイナー問題が出題されることがあるため、どちらかというと対策が立てにくい科目である。

とはいえ、毎回、過去に例がないような問題が出題されているというわけではなく、狙われやすいポイントは、ある程度絞ることが可能なため、やはりこちらも「法令」問題と同様、まずは過去問をベースに知識を深めていく勉強法が有効。

なお、「ガス技術」は選択制となっているので、勉強時間が限られている者は、得意分野に絞って勉強した方が功を奏する場合が多い(中途半端な対策は得点できない恐れがある…)。


論述問題というと、いったいどれくらいの文章を書かなければならないのかという心配がありますが、ガス主任技術者試験では「○○文字以内」という指示はなく、与えられた解答用紙(1枚)の枠内に収まっていれば特に問題ありません。

解答用紙の枠内を踏まえると、多くても1,000字程度になるかと思いますが、論述問題は時間との戦いとなります。

というのも、過去の問題を踏まえると、1問解くのにだいたい20~30程度(問題を読んで出題者の意図を理解し、頭の中である程度整理してまとめると、それくらいの時間は必要)はどうしてもかかってしまうため、見直し時間などを考慮すると、1時間という制限時間は決して長くはないからです。

しかし、足切りライン(70点満点中20点以上)は緩く、自分なりの考えや答えを述べる必要はない(ガス技術は問題によって、若干、頭を使う…)ため、極端な話し、マークシート問題で高得点を上げることができれば、求めらえているキーワードや論定さえしっかりと押さえていれば、項目の箇条書きでも、足切りライン程度の得点は稼げる問題が出題されています(しかし、上位クラスの甲種・乙種はそうはいかない…)。