

また、グラフを見ると、「Ⅲ種」に比べて「Ⅱ種」試験の方が合格率の数値の変動が激しいことから、回によって問題の難易度が安定していないのではないかということが推測され(同試験は合格基準が予め公表されている絶対評価試験なので、合格基準点を満たせば合格できる試験)、そういう意味では、「Ⅲ種」以上に運的な要素(つまり、問題が比較的優しい回に当たれば合格者は増えますが、逆に難易度の高い問題が多い回に当たってしまうと、合格基準を満たすことができず不合格者が増える…)で合格の有無が決まることがあるように思われます。
では、次に両試験の試験内容を比較してみましょう。
\ | Ⅱ種(ラインケアコース) | Ⅲ種(セルフケアコース) |
受験資格 | 特になし | |
試験時間 | 2時間 | |
出題形式 | 選択問題(4肢択一 / マークシート方式) | |
問題数 | 計50問(100点満点 / 各2点) | |
合格基準 | 70点以上の得点(100点満点) |
そこで、さらに到達目標や出題内容などを比較してみると、次のような点で大きな違いがあることがわかります。
\ | Ⅱ種(ラインケアコース) | Ⅲ種(セルフケアコース) |
対象 | 管理職 | 一般社員 |
目的 | 部門内、上司としての部下のメンタルヘルス対策の推進 | 組織における従業員自らのメンタルヘルス対策の推進 |
到達目標 | 部下が不調に陥らないよう普段から配慮するとともに、部下に不調が見受けられた場合には安全配慮義務に則った対応を行うことができる。 | 自らのストレスの状況・状態を把握することにより、不調に早期に気づき、自らケアを行い、必要であれば助けを求めることができる。 |
出題内容 | ①メンタルヘルスケアの意義と管理監督者の役割 ②ストレスおよびメンタルヘルスに関する基礎知識 ③職場環境等の評価および改善の方法 ④個々の労働者への配慮 ⑤労働者からの相談への対応 ⑥社内外資源との連携 ⑦心の健康問題をもつ復職者への支援の方法 |
①メンタルヘルスケアの意義 ②ストレスおよびメンタルヘルスに関する基礎知識 ③セルフケアの重要性 ④ストレスへの気づき方 ⑤ストレスへの対処、軽減の方法 |
そのため、「Ⅱ種」コースの方が難しいという受験者が多いのは、自分自身のメンタルヘルス対策が中心となる「Ⅲ種」に対し、「Ⅱ種」は自分自身のケアに加えて、管理者としての周囲の部下を含めたメンタルケアや職場改善などの要素が強くなってくるため、管理職経験のない一般社員にとっては、どうしてもとっつきにくい(理解しにくい)面があるからです。
しかし、単に管理職経験がないから「Ⅱ種」試験の方が難しいというわけではなさそうです。
「Ⅱ種」「Ⅲ種」それぞれの試験問題(過去問)を比較・分析してみると、主に次のような点で出題問題の内容に違いが見られます。
Ⅱ種(ラインケアコース) | Ⅲ種(セルフケアコース) |
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そのため、試験開始当初にみられた公式テキストや過去問の丸暗記では解答に辿り着けないような、ちょっと視点を変えた応用力が試される問題も出題されはじめているので、かつてのような楽に合格できるような試験ではなくなってきているようです。
Ⅱ種(ラインケアコース):出題例 「ラインによるケア」において管理監督者に求められる役割に関する次の記述のうち、最も適切なものを一つだけ選び、解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。 (1)職場環境がメンタルヘルス不調の原因である場合には、第二の不調者が出現しないように、しばらく様子をみる必要がある。 (2)職場環境などの改善には、物理的な職場環境のみならず、労働時間、仕事の量と質、職場の人間関係、職場の文化や風土などに関する問題点を改善することも含まれる。 (3)部下からの相談に対応する場合には、まず問題解決を目的として、適切な情報を提供することが最も大切である。 (4)休職者が職場復帰する際の職場の環境整備は、標準化された職場復帰支援プログラムに則って行わなければならない。 Ⅲ種(セルフケアコース):出題例 メンタルヘルス不調への早期対処に関する次の記述のうち、最も不適切なものを一つだけ選び、解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。 (1)メンタルヘルス不調は、本人の判断能力も低下していることがあるため、第三者の指摘によって初めて気づくという場合も少なくない。 (2)ストレスの健康面での現れ方としては、微熱、腰痛、頭痛や食欲不振などの身体面に現れるよりも、「気分が乗らない」、「少し落ち込んでいる」などの気分の面に出る。 (3)メンタルヘルス不調は、多くの場合、独力で解決できる問題ではない。 (4)メンタルヘルス不調について周りの人に自発的に相談していくという行動自体に問題を解決する力が備わってくる。 |