建築設備士試験の難易度:一次試験top
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建築設備士の資格を取得するには、公益財団法人・建築技術教育普及センターが実施する建築設備士試験に合格しなければなりません。

そこで、受験者がまず何より気になるのは、試験の難易度ではないでしょうか。

特にこれから試験対策を始めるようなビギナー受験者であればあるほど、いったいどのような問題が出題されるのか、問題の難易度はどの程度なのか…などなど、試験に関する情報は少しでも掴んでおきたい!というが正直な気持ちのはずです。

建築設備士試験は、難しいことは難しいけれど、決して難易度の高い試験ではない!と言う人もいますが、必ずしもすべての受験者に当てはまるとは限りません。

確かにそう思わせる部分もありますが、本試験を一度も受けたことのないビギナー受験者が、この話を鵜呑みにするのは危険です。

そこで、それはなぜかについて、これから説明していきましょう。
受験者 矢印
建築設備士
一次試験
〈学科〉
矢印
建築設備士
二次試験
〈設計製図〉
矢印
合格証書
交付
矢印
(社)建築設備技術者協会
名簿登録
【任意】
なお、建築設備士試験は、一次試験と二次試験とに分かれ、二次試験は一次合格者でなければ受けることができないこと、また、一次試験と二次試験とでは試験形態が大きく異なるということを押えておいてください。

その点を踏まえた上で、まずは一次試験の難易度について考察してみたいと思います。





様々な試験データを基に建築設備士試験の難易度を考察してみる [一次試験]

合格率の分析
一般的に合格率が10%を下回るような国家試験は、かなり難易度の高い難関試験と見て間違いないので、たた闇雲にテキストを読んだり、漫然と問題集を繰り返し解いているだけでは、いくら努力しても合格に結びつかないことも多いのですが、合格率が20~30%前後まで上昇すると、とりあえずテキストを読み、過去問を中心とした問題さえマスターしてしまえば、特に他のことは考えずとも合格できてしまうことが結構があります(もちろん、すべての資格試験に該当するわけではありませんが…)。

つまり、極端な話し、頭を使う必要はないわけです。

表現が悪いので不快に感じた方には申し訳ないと謝りたいところですが、ここでいう〝頭を使う必要がない〟とは、近年の本試験の出題傾向や特徴などを分析した上で試験対策に取り組む必要がないということです。

では、その点を踏まえた上で、こちらの資料をご覧ください。

これは建築設備士試験(一次)の受験者データですが、この資料によると、一次試験の合格率は概ね20~30%台で推移していることが見てとれます。
実施年度 受験者 合格者 合格率
2012年(平成24) 2,310 700 30.3%
2013年(平成25) 2,284 539 23.6%
2014年(平成26) 2,367 652 27.5%
2015年(平成27) 2,589 831 32.1%
2016年(平成28) 2,677 737 27.5%
そして、この建築設備士試験(一次)に限っては、先に説明した特徴が当てはまるのです。

つまり、試験勉強に割ける時間さえ確保できる環境にあって、過去問を中心とした問題を徹底的に問いて理解さえしてしまえば、必ず合格できる試験だということです。

そのため、試験対策を行う際には、あまり深く考える必要はないので、そういう意味では勉強のしやすい試験と言えます。

合格基準の分析

では次に、合格基準について少し分析してみましょう。

建築設備士試験(一次)の合格基準は総得点だけでなく、各分野ごとに最低得点を設ける足切りラインがありますが、試験後、受験者の出来によって基準点が調整されることもあります。

そのため、前もって公開されている合格基準点を超えているからといって必ずしも合格できるとは限りませんが、過去数年間の建築設備士試験(一次)の合格基準点を振り返ってみると、その調整点は±1点であり、基準点となるラインが大幅に変動するようなことはないようです。

ところが、先に示した試験合格率の方を見ると、基準点を調整しているにもかかわらず、合格率の数値が±10ポイント程度変動している年度も見られます。
建築一般知識…12点以上/30点満点 (40%)
建築法規………10点以上/20点満点(50%)
建築設備………25点以上/50点満点 (50%)
総得点…………60点以上/100点満点 (60%)

 ※ ただし、状況により合格基準点の調整あり

建築一般知識 建築法規 建築設備 総得点 補正
H21 12点 10点 25点 60点 -----
H22 12点 11点 25点 60点 建築法規の補正あり
H23 12点 9点 25点 59点 建築法規、総得点の補正あり
H24 12点 10点 24点 60点 建築設備の補正あり
H25 12点 10点 25点 60点 -----
H26 11点 10点 25点 60点 建築一般知識の補正あり
H27 12点 10点 25点 60点 -----
H28 12点 10点 25点 60点 -----
ということは、おそらく多くの受験者が、基準点前後の得点に集中しているだろうということが推測されます。
《一次試験の時間割》
15分(9:45~10:00) 注意事項等の説明
3時間(10:00~13:00) 建築一般知識・建築法規
休憩(13:00 ~ 14:00)
10分(14:00~14:10) 注意事項等の説明
3時間(14:10~17:10) 建築設備
そのため、1点の得点が合否を大きく左右してしまうこともあるので、ケアレスミスなどは命取りとなり、本試験では絶対に避けなければならない行為なのですが、一次試験は午前・午後ともに3時間にも及ぶ長丁場の試験なので、途中で集中力を切らしてしまい、普段やらないようなミスをしてしまうことも十分に考えられます。

特に一次試験は、5肢択一のマークシー方式なので、集中力を切らすとミスを犯しやすい試験です。

その点を考慮すると、試験問題の難易度どうこうよりも、いかにミスをせず解答欄を埋めていくか、ケアレスミスをなくすような工夫(対策)が必要といえるでしょう。

試験問題・出題傾向の分析

建築設備士試験(一次)は、5肢択一のマークシート方式で出題されます。

例えば次のような形で出題されるわけですが、その出題パターンは9割方、正誤問題(特に不適切な選択肢を選ばせる問題が多い)として出題されているようです。
集合住宅の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1)生活の変化に対応して間仕切り等の変更ができるように、スケルトン・インフィル方式を採用した。
(2)住戸の奥行きが深い中層集合住宅において、通風と採光を得ることができる光庭を採用した。
(3)住宅のバルコニーに設ける手すり子の間隔を、内方で200mmとした。
(4)事務所ビルから集合住宅へのコンバーションにおいて、給排水の設備配管スペースを確保するために、床を躯体から200mm持ち上げて二重床とした。
(5)住戸の収納スペースの面積を、専有面積の10~20%とした。

【H25年度 建築設備士一次試験:建築一般知識問題より抜粋】
本試験で出題される大半の問題は、建築設備士として必要な専門知識を正確に理解しているかを問う問題で構成されていますが、5択とはいえ、専門性の強い難易度の高い問題が出題されており、全般的には2級建築士レベルの問題が多いものの、分野によっては1級建築士レベルの問題が出題されているといった現状があります。

しかし、これまでの試験問題を振り返ってみると、建築設備士試験(一次)は、出題されるポイントをある程度、絞り込むことができそうです。

つまり、問題自体の難易度や専門性は高いものの、過去に出された問題が形を変えて繰り返し出題されやすいため、まずは過去問をマスターしてしまうことが近道と言えます。

過去問を徹底して理解してしまうことで、5択の選択肢を2~3択まで絞り込むことができたり、あるいはそのまま解答に結びつく選択肢が選べることもあるので、高得点は無理でも、合格基準点を満たすだけの実力は十分身に付くはずです。

そういう意味では、建築設備士試験の一次は対策の立てやすい試験なので、冒頭でも述べたように、難易度は高くても、過去問を中心にしっかりと勉強しておけば、一次突破はそれほど難しい試験ではありません。

がしかし!一次試験には、ひとつ大きな落とし穴があります。

それは、建築法規分野の問題です。

建築設備士試験では、法令集を持ち込むことができますが、ビギナー受験者や法令集を引き慣れていない受験者にとっては、確認作業に時間を取られてしまうので、この点が少し厄介な問題点といえるでしょう。

つまり、本試験における法規問題は、いかにスピーディ&正確に関連個所を確認することができるかが重要になってくるということです。

したがって、一次試験は専門知識の習得や理解も大事ですが、それと同時に普段から法令集を引き慣れておく必要があるので、試験問題の難易度とはまた別の問題がある試験と言えるかも知れません。

ちなみに、試験の実施団体である(公財)建築技術教育普及センターHP内では、本試験で出題された問題が公開(現在は直近2~3回分の試験問題を掲載)されているので、過去問が気になった方は、とにかく一度確認してみましょう。