コンクリート診断士試験の特徴top
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コンクリート診断士の資格は、ちょうど21世紀に入る年にスタートしましたが、気が付けば、制度の発足からもう10年を超えています。

しかし、コンクリート診断士は名称独占資格であり、資格がなければ業務が行えないといった類の国家資格でもないため、知っている人は知っているものの、どちらかというと地味なイメージがあります。

そのため、スタートから10年以上経った現在も、試験に関する情報量は少なく、ネット上で調べても、内容の濃い情報はたいして得られないというのが現状のようです。

とはいえ、コンクリート診断士の資格を取得するには、公益社団法人・日本コンクリート工学協会が実施するコンクリート診断士試験を避けて通ることはできません。

そこで、集められるだけの情報を収集してみたので、その情報をまとめつつ、受験者数や合格率といった過去の試験データを少し客観的に分析してみたいと思います。

受験者データ:試験合格率の分析

下記に示す資料は、コンクリート診断士試験の受験者データです。

この資料を基に試験の受験状況を少し振り返ってみたいと思います。
実施年度 申込者数 受験者数 合格者数 合格率
第1回 2001年〈H13〉 未確認 4,408 796 18.1% -----
第2回 2002年〈H14〉 未確認 7,106 1,250 17.6% (-0.5)
第3回 2003年〈H15〉 未確認 6,570 1,161 17.7% (+0.1)
第4回 2004年〈H16〉 未確認 5,683 796 14.0% (-3.7)
第5回 2005年〈H17〉 未確認 4,,894 792 16.2% (+2.2)
第6回 2006年〈H18〉 6,055 4,853 747 15.4% (-0.8)
第7回 2007年〈H19〉 5,785 4,726 891 18.9% (+3.5)
第8回 2008年〈H20〉 5,964 4,888 776 15.9% (-3.0)
第9回 2009年〈H21〉 6,327 5,040 764 15.2% (-0.7)
第10回 2010年〈H22〉 7,343 5,998 1,047 17.5% (+2.3)
第11回 2011年〈H23〉 7,091 5,640 887 15.7% (-1.8)
第12回 2012年〈H24〉 6,181 4,945 818 16.5% (+0.8)
第13回 2013年〈H25〉 6,548 5,241 694 13.2% (-3.3)
第14回 2014年〈H26〉 6,315 4,990 790 15.8% (+2.6)
第15回 2015年〈H27〉 6,582 5,462 806 14.8% (-1.0)
第16回 2016年〈H28〉 6,854 5,422 804 14.8% (±0.0)
まずは、試験合格率に関する数値や推移状況について見ていきましょう。

コンクリート診断士試験の合格率は、例年、ほぼ安定した推移を示しているようで、概ね15~18%台で推移していることがわかります。

合格率が安定した推移を示す理由はいくつかありますが、やはり一番の理由は、相対評価試験であるということが大きいと考えられます。

ちなみに、相対評価試験とは絶対評価試験のように予め合格基準が決まっておらず、試験実施後、受験者全体の上位●%といったように成績上位者から順に合格する試験制度のことです。

コンクリート診断士試験の合格ラインは非公開であり、一般には公表されていません。

一説には、下記のような合否判定基準が用いられているのではないかといった話もありますが、その詳細についてはよくわかっていません。
■四肢択一問題:成績上位30%程度の者が記述式試験の選考対象となる(それ以外は不合格)
■記述式問題 :一定の選考基準を基に複数の評価者で採点(6~7割以上)
審査基準

・変状の種類と原因        ・対策の種類、補修・補強工法
・劣化の機構           ・建築物あるいは土木構造物の診断の考え方・調査
・調査手法            ・技術・基準類の変遷
・劣化予測、評価および判定基準
■四肢択一問題と記述式問題の評価を合算し、成績上位15%程度の者を合格者とする
しかし、試験合格率が毎年安定した推移を示していることなどを踏まえると、先ほど述べたように、コンクリート診断士試験は相対評価的な要素を持った試験制度であることは間違いなさそうです。

ただ1点、2013年度の試験において、合格率が13.2%という過去最低の数値を更新してしまった点が気になります。

これまで試験の過去最低合格率は、2004年度の14.0%でしたが、同年はそれよりもさらに0.8ポイントほど低い数値となっています。

2013年度のコンクリート診断士試験の合格率が過去最低になってしまったのは、主に次のような理由が考えられますが、はっきりとしたことはよくわかりません。
いずれにせよ、コンクリート診断士試験の合格率が過去最低を更新してしまったのは事実なので、受験者は今後の動向に注目する必要がありそうです(しかし、次年度以降、合格者数は増加しているため、一時的なダウンをみることも…)。

受験者データ:受験者数の分析

次に受験者数について少し分析してみたいと思います。

コンクリート診断士試験は年1回(7月)実施されますが、受験者数は第2回の7,106人をピークにやや減少傾向に向かっていました。

ところが、第8回以降、再び上昇傾向にあり、ここ最近は、概ね5,000~5,500人前後で増減を繰り返しながら推移しているといった感じで、受験者数が伸び悩んでいることがわかります。

そこで、受験者数が増加する年には何か理由があるのか、その背景について少し調べてみたところ、受験者数の増減に関係しそうな資料があったので、まずは、こちらの資料をご覧ください。
受験資格の変更
これは、コンクリート診断士制度規則の一部です。

この規則によると、コンクリート診断士試験は受験資格に関する変更がこれまで何度が行われていますが、どうやら、受験資格の変更後に行われた試験の受験者数が増加しているようです。

コンクリート診断士試験は受験資格があるため、誰でも自由に受験できるというわけではなく、一定の資格のある者が試験に挑戦することができます。

そのため、制度規則の変更により、受験資格に新たに追加された該当者が試験を受けてみようとする傾向が見られるようです。

また、試験制度の一部改正により、平成22年度実施分からは、午後に実施されるコンクリート診断士試験のみで合否判定が行われるようになりました(午前中に実施されていた2択問題(〇×式)のコンクリート試験は廃止!)。

そのため、平成22年度における受験者数の増加は、どうやら、この試験制度の一部改正が大きく影響しているようです。

このような背景を踏まえ、これまでの推移を冷静に分析してみると、どうやら資格の重要性が高まるようなキッカケなど(試験制度の変更、受験資格の追加・変更・廃止、業務独占資格や国家資格に繰り上がる…etc)がない限りは、受験者数は今後も同じような推移を見せることが予想されます。



受験者データ:試験地別合格率の推移状況

(社)日本コンクリート工学協会は、HP内で試験地別の受験者データを公開しています。

そこで、この資料を基に合格率の高い試験地から順にまとめてみました。
2008年〈H20〉 2009年〈H21〉 2010年〈H22〉
試験地 受験者 合格者 合格率 試験地 受験者 合格者 合格率 試験地 受験者 合格者 合格率
1位 東京 1,514 269 17.8% 東京 1,553 279 18.0% 東京 1,813 361 19.9%
2位 名古屋 512 87 17.0% 大阪 799 133 16.6% 大阪 936 168 17.9%
3位 仙台
大阪
352 56 15.9% 広島 326 52 16.0% 広島 364 64 17.6%
4位 794 126 名古屋 583 85 14.6% 福岡 922 156 16.9%
5位 福岡 759 114 15.0% 福岡 644 86 13.4% 名古屋 681 108 15.9%
6位 広島 324 46 14.2% 札幌
高松
483 63 13.0% 仙台 465 72 15.5%
7位 高松 153 20 13.1% 192 25 札幌 558 84 15.1%
8位 札幌 436 53 12.2% 仙台 403 39 9.7% 高松 202 27 13.4%
9位 沖縄 44 5 11.4% 那覇 57 2 3.5% 那覇 57 7 12.3%

2011年〈H23〉 2012年〈H24〉 2013年〈H25〉
試験地 受験者 合格者 合格率 試験地 受験者 合格者 合格率 試験地 受験者 合格者 合格率
1位 東京 1,769 326 18.4% 大阪 649 132 20.3% 大阪 730 117 16.0%
2位 名古屋 683 124 18.2% 東京 1,585 314 19.8% 東京 1,673 262 15.7%
3位 札幌 508 89 17.5% 仙台 398 66 16.6% 名古屋 657 91 13.9%
4位 大阪 848 139 16.4% 沖縄 43 7 16.3% 札幌 391 53 13.6%
5位 高松 206 32 15.5% 名古屋 601 89 14.8% 仙台 396 48 12.1%
6位 仙台 315 46 14.6% 広島 318 46 14.5% 広島 329 38 11.6%
7位 広島 343 37 10.8%  福岡 779 105 13.5% 福岡 802 67 8.4%
8位 福岡 909 89 9.8% 高松 179 19 10.6% 高松 173 14 8.1%
9位 沖縄 59 5 8.5% 札幌 393 40 10.2% 沖縄 90 4 4.4%

2014年〈H26〉 2015年〈H27〉 2016年〈28〉
試験地 受験者 合格者 合格率 試験地 受験者 合格者 合格率 試験地 受験者 合格者 合格率
1位 沖縄 56 11 19.6% 東京 1,759 302 17.2% 東京 1,729 296 17.1%
2位 仙台 412 77 18.7% 大阪 733 114 15.6% 大阪 767 123 16.0%
3位 東京 1,621 281 17.3% 広島 361 56 15.5% 広島 360 57 15.8%
4位 札幌 338 56 16.6% 名古屋 657 99 15.1% 仙台 500 70 14.0%
5位 大阪 689 112 16.3% 高松 229 33 14.4% 名古屋 712 96 13.5%
6位 名古屋 615 92 15.0% 札幌 387 55 14.2% 札幌 354 47 13.3%
7位 広島 327 43 13.1% 仙台 457 61 13.3% 福岡 701 85 12.1%
8位 福岡 740 96 13.0% 福岡 802 80 10.0% 沖縄 77 8 10.4%
9位 高松 192 22 11.5% 沖縄 77 6 7.8% 高松 222 22 9.9%
一見、どうでもいいデータのようにも思えますが、こうしてランキング形式に並び替えてみると、ある特徴が見えてきます。

それは、合格率の高い試験地が、毎年だいたい決まっているということです。

特に東京大阪名古屋といった日本における三大都市圏は、どちらかというと上位にランクインしているようです。

どの試験地で受けてもコンクリート診断士試験の内容は同じはずなので、なぜこのような傾向が見られるのかはよくわかりませんが、いずれにせよ、試験地別に見ると三大都市圏の試験合格率は毎年平均して高いというのは事実のようです。