コンクリート診断士試験の難易度top
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これまでの試験結果を振り返る分析ページでも触れましたが、コンクリート診断士試験は受験者数が少ないせいか、試験情報を収集するのに苦労します。

そのため、合格者数や合格率が示された受験者データだけを見て、試験の難易度はだいたいこんなものだろうと推測している方が多いのではないでしょうか。

しかし、それだけではコンクリート診断士試験の難易度を把握したとは到底言えません。

そこで、過去に出題された本試験問題(いわゆる、過去問)を基に、コンクリート診断士試験の難易度について少し客観的に考察してみたいと思います。
受験者 矢印
講習会
受講
矢印
コンクリート
診断士試験
矢印
登録
矢印
コンクリート
診断士
矢印
登録更新研修
(4年毎)
本試験の概要と特徴
試験の難易度についての説明に入る前に、まず知っておいてもらいたいことは、コンクリート診断士試験は、①択一式問題と②記述式問題で構成されているということです。

しかも、①と②が別々の時間帯で実施されるわけではなく、同一時間内(試験時間は3時間30分)で行われます。

そのため、それぞれの問題にかける時間配分は受験者が好きなように決めることができますが、コンクリート診断士試験は合格基準こそ公表されていないものの、四肢択一問題と記述式問題それぞれに足切り点が設けられているので、その点を意識したバランスの良い時間配分を考えなければならないということを押えておいてください。

では、択一式問題と記述式問題、それぞれの試験問題を振り返りながら、試験の難易度について少し考察してみましょう。

コンクリート診断士試験の難易度について考えてみよう [択一式問題 編]

コンクリート診断士試験の択一式問題は4択問題として出題されますが、過去問を振り返ってみると、その出題パターンは【例①】のような正誤問題が目立ちます。
例1:正誤問題【2006年度】

鉄筋コンクリート梁部材(梁高700mm)の側面に、コンクリート打込み後2週間の時点でひび割れが発生していることが確認された。このひび割れの発生原因として、次のうち不適切なものはどれか。

(1)セメントの水和熱
(2)コールドジョイント
(3)支保工の沈下
(4)アルカリ骨材反応
しかし、あくまで正誤問題が目立つというだけで、他にも、組合わせ問題【例②】や穴埋め組合わせ問題【例③】、あるいは、計算問題【例④】といった出題パターンも確認できます。
例2:組合せ問題【2002年度】

コンクリートの初期欠陥の種類(A群)とその原因(B群)として関係の深いものを結んだ次の組合せのうち、適当なものはどれか。
(A群)

A.柱のジャンカ
B.壁のコールドジョイント
C.負荷の鉄筋上のひび割れ
D.壁の砂すじ
(B群)

ア.コンクリートの凝結
イ.コンクリートの凍結
ウ.コンクリートの沈み
エ.過密配筋
オ.ブリーディング
(1)A-イ、B-ア、C-ウ、D-オ
(2)A-エ、B-ア、C-ウ、D-オ
(3)A-イ、B-オ、C-エ、D-ウ
(4)A-エ、B-オ、C-イ、D-ウ

例3:穴埋め組合せ問題【2005年度】

塩害に関する次の記述中の( A )~( D )に入る用語の組合せのうち、適当なものはどれか。

コンクリート中の塩化物イオンにより鋼材表面の不動態皮膜が破壊され、鋼材表面から鉄イオンが細孔溶液中に溶け出す反応を( A )反応という。同時に、鋼材から供給された電子と( B )および( C )との反応を( D )反応という。
A B C D
(1) カソード 水酸化カルシウム 水素 アノード
(2) アノード 酸素 カソード
(3) カソード 酸素 アノード
(4) アノード 水酸化カルシウム 水素 カソード

例4:計算問題【2002年度】

アルカリシリカ反応を生じる可能性を推定するために、セメントの化学分析結果からアルカリ量を求めた。セメントの全アルカリ量(等価Na2O換算量)として、適当なものは次のうちどれか。
化学成分(%)
Ig.loss Insol. SiO2 AI203 Fe203 CaO MgO
1.5 0.2 21.2 5.2 2.8 64.2 1.5
SO3 Na2O K2O TiO2 P2O5 MnO CI
2.0 0.31 0.48 0.26 0.13 0.10 0.005
(1)0.95%   (2)0.79%  (3)0.63%  (4)0.31%
そして、出題パターンとしては最も厄介だと言われている個数問題【例⑤】も、過去には出題されているようです。

ちなみに、個数問題とは「次のうち正しいものはいくつあるか?」といったように、正しい選択肢が1つとは限らないので、時間がかかるだけでなく、正確な知識がなければ解答できないため、出題パターンとしては最も難易度が高く、内容にもよりますが正解率は平均的に低くなる傾向がみられます。
例5:個数問題【2004年度】

普通ボルトランドセメントを用いたコンクリートの中性化(炭酸化)に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものの個数はいくつか。

① コンクリートが中性化(炭酸化)すると収縮する。
② 中性化(炭酸化)した部分のコンクリートは、弱アルカリ性を示す。
③ 水セメント比と中性化(炭酸化)速度との間には相関性はない。
④ 中性化(炭酸化)することにより、コンクリートの圧縮強度は低下する。

(1)1個  (2)2個  (3)3個  (4)4個
では次に、本試験ではいったいどのような内容の問題が出題されているのか、その特徴について簡単にまとめてみましょう。

近年は単に専門知識に関する知識確認だけでなく、図表や写真をはじめ、様々な情報を提示した上で判断させるような、より実務的、かつ、応用力を問う問題が増えているようです。

そのため、回を重ねるごとに、出題傾向も徐々に変わってきており、受験者に求められている質の難易度は確実に上がっていることは間違いありません。
本試験問題の特徴
ちなみに、コンクリート診断士試験の択一式問題は、大きく分けると次の5分野に分けて考えることができます。

以前は、分野によって問題数が偏る(変状からの出題は特に少なく、調査手法に関する問題が多かった)傾向も見られましたが、ここ数年は、以前のような偏りがなくなったようで、比較的、どの分野からもバランス良く出題されています。

問題数の出題配分に関しては、おそらく今後も5分野からバランス良く出題されることが予想されるので、どの分野も平均点以上の得点が取れるようバランスの良い学習を心がけてください。

参考までに、本試験における分野ごとの特徴について簡単にまとめておきます。
分野 出題傾向・特徴
変状 特にひび割れに関する問題が多い分野だが、他にも初期欠陥やエフロレッセンス、汚れ、たわみ、変形、浮き、剥落といったテーマからの出題もある。しかし、比較的、出題項目は限定されているので、まずは基本となる主要な変状をしっかりとマスターすることが大切。
劣化 中性化や塩害、アルカリシリカ反応、凍害、化学的腐食といった項目からは、ほぼ毎年のように出題されている。そのため、まずは劣化の仕組みや原因をしっかりと理解しておくことが大事。
調査手法 出題項目は多いが、特にひび割れや剥離、コンクリートの圧縮強度、調査・測定に関する基本的な事項からの出題が多いように思われる。コンクリートの調査方法は数多くあるので、それぞれの特徴や注意点をしっかりと理解しておきたい。
評価・判定 補修や補強に関する基本的な事項からの出題が多いようだが、近年は凍害や疲労、火災といった項目からの出題が目立つように思われる。また、数は少ないものの、企画・基準類からの出題がほぼ毎年出題されている点も見逃せない。
対策・補修・補強 調査手法と同じく、出題範囲が非常に多岐にわたるのが特徴。工法選定に関する問題が目立つだが、まずは各種補修、補強工法の特徴や目的をしっかりと押さえ、その違いを理解することが大切。




コンクリート診断士試験の難易度について考えてみよう [記述式問題 編]

コンクリート診断士試験における記述式問題は「必須問題(問題A)」と「選択問題(問題B)」とに分かれ、受験者は計2題の小論文を作成することになりますが、受験者がまず押えておいて欲しいことは、問題Aと問題B、ともに制限時間内で完成させて提出するというのが最低条件であるということです。

なぜなら、コンクリート診断士試験の記述式問題は、問題A・Bのどちらか一方だけを完成させて提出しても採点の対象とならないからです。

つまり、問題A・B、どちらの問題も完成形で提出して、はじめて採点対象となるので、2題の小論文を制限時間内で必ず完成させなければなりません。

では、問題Aと問題Bでは、どのような違いが見られるのか、それぞれの問題の特徴や難易度、出題傾向などについて少しまとめてみましょう。
必須問題 【問題A】
問題Aは必須問題なので、受験者全員が解答しなければなりません。

そこで、本試験ではいったいどのような内容の問題が出題されたのか、過去の出題テーマ(要旨)を簡単にまとめてみました。
2002年 1,000字以内 コンクリート構造物の維持管理の重要性とコンクリート診断士に求められる資質と社会的役割について
2003年 1,000字以内 昭和40年代の社会的・技術的背景とコンクリート構造物の診断を行う上での留意点について
2004年 1,000字以内 コンクリート診断士として社会的に高い信頼性を得るために必要な心構え(理念、姿勢など)と技術的能力について
2005年 800字以内 コンクリート構造物の維持管理を行う上で必要な記録の保存と活用
2006年 未確認 昨年、問題となった構造計算偽装事件を例に挙げ、コンクリート診断士としての資質やモラルといった基本的な考え方について
2007年 1,000字以内 社会資本整備の現状と課題 / コンクリート診断士の役割
2008年 750字以内 構造物に関する具体的な事故事例の概要(150字以内) / コンクリート診断士の役割や診断業務のあり方(600字以内)
2009年 900字以内 社会資本整備のあり方 / 構造物の維持管理に対し、どのようにして取り組むべきかコンクリート診断士としての考え
2010年 800字以内 最近の社会情勢の変化を踏まえた上でのコンクリート診断士の役割
2011年 1,000字以内 コンクリート構造物の時代区分と耐久性(500字) / コンクリート構造物の今後の維持管理(500字)
2012年 1,000字以内 環境負荷を低減するための取組み / 社会情勢の変化をふまえた技術開発
2013年 1,000字以内 構造物の安全性と不具合事象原因と背景、具体例 / 維持管理に必要な点検・評価・判定、対策と課題
2014年 1,000字以内 構造物の高齢化、長寿命化、コンクリート診断士に必要な技術力、心構え
2015年 1,000字以内 診断における技術者倫理ととるべき対応 / 診断士としての資質向上に対する自己研鑽と人材育成
過去の出題テーマを振り返ってみると、試験開始当初は、単純にコンクリート診断士として相応しいかどうか、その資質やモラル、役割などを問う問題+調査・診断に関する問題が多かったように思われますが、徐々にテーマも変わってきているようで、近年は世間で注目されるような時事問題や社会情勢の変化などを踏まえた上で、その考えを問う問題が目立ちはじめています(コンクリート診断士としての資質以外の考えを求める問題が増えている)。

そのため、必須問題は抽象的な表現が多く、特に明確な模範解答というものがないので、人(特に独学)によっては対策が立てづらく難易度が高いと感じてしまう方もいるかもしれません。

しかし、裏を返せば、ある程度、自由に解答することが許される問題ともいえるので、日頃から、社会的に注目されているような時事問題には積極的に関心を持つことが大切です。
選択問題 【問題B】
一方、コンクリート診断士試験の選択問題は、建築と土木に分類され、毎年2~3問出題されています。

近年における問題Bのテーマは、下記表のとおりです。
2009年 建築 ひび割れの形態的特徴と発生原因、補修方法
道路橋RC床版 劣化原因の推定と進行メカニズム、必要な対策
2010年 建築 害等級の推定と追加調査、必要な対策
RC高架橋 変状原因の推定、劣化の推進予測、必要な対策と維持管理計画
2011年 建築 ひび割れ等の発生原因、対策と選定理由
RC橋脚 劣化原因の推定と必要な調査・対策
2012年 建築 ひび割れと発生原因と必要な調査項目・対策
桁橋 変状原因の推定、必要な調査項目や方法、対策
2013年 建築 変状原因の推定、硫酸塩による腐食調査、補修方法と維持管理計画
道路橋RC床版 再劣化原因の推定、調査、対策
RCラーメン高架橋 火害程度の判定、調査・補修、補強計画立案
2014年 建築 ひび割れ、錆、剥落等の発生原因と必要な調査・補修方法
桁橋 ひび割れ、漏水、凍結防止剤、変状原因の対策
2015年 建築 中性化、劣化進行の予測、維持管理計画や補修方法
桁橋 ひび割れ、鉄筋破断、変状原因等の推定や耐荷性能の評価・影響要因と対策
問題A(必須問題)とは違い、図表や写真を使いながら具体的な事例を示し、問題点や必要な対策法について問うのが特徴といえるでしょう。

そのため、実際の調査・診断に即した形で出題されやすく、実務的な要素が強いので、どちらかというと実務経験者向きのテーマになることが多いようです。

したがって、問題Bに関しては、実務経験の有無によって、試験問題に対する難易度の受け取り方は変わってくるかと思われます。