ちなみに、DCプランナーは、FP(ファイナンシャル・プランナー)とよく比較されますが、資格の知名度や受験者数の規模という点では、FPの方が圧倒的に人気があります。
というのも、FPは年金、株式、金融商品、保険、ローン、不動産、税金…などなど、とても広範囲の専門知識を基に資産運用の提案を行うスペシャリストですが、DCプランナーの方は、年金に特化した専門資格なので、大半の人は、より幅広い知識が学べ、また、実務上でも様々なフィールドで活用できるFPの方が何かと利用価値があると考える人が多いからでしょう。
また、たとえ試験に合格しても、登録更新制度があるため、何かと費用(通信講座の受講料や更新手数料)がかかるというのも、受験者数がいまひとつ伸びない背景のひとつと思われます。
そのため、資格が誕生した当時は、それなりに注目されましたが、近年は以前ほどの人気はなく、年金関連の知識を習得したい一部の社会人がスキルアップ目的に受験されているというのが現状のようです。 しかし、先にもお話ししたように、特に年金についてはとても深く掘り下げた知識が習得できるので、金融業界関係者や企業経営者、福利厚生担当者など、職種や業種によってはDCプランナーの資格取得を目指す意味は十分にあります。 そこで、DCプランナーの資格を得るために避けて通ることのできない試験は難しいのか、それとも易しいのか? 受験者が最も気になる試験の難易度について、少し客観的に分析してみたいと思います。 |
そこで、まずは一般公開されている受験者や合格率といった受験者データから、試験の難易度について少し考察してみましょう。
また、試験の実施機関も、日本商工会議所と金融財政事情研究会による共同ではなく、金融財政事情研究会のみが実施するということも押えておいてください。
では、さっそく受験者データを見てみましょう。
下記に示す資料は、3級DCプランナー試験の受験者データ(試験結果)です。
実施年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |||
2002年 | 9月 | 第1回 | 788 | 675 | 604 | 89.5% | ----- |
2003年 | 3月 | 第2回 | 1,175 | 946 | 814 | 86.0% | (-3.5) |
9月 | 第3回 | 1,099 | 925 | 799 | 86.4% | (+0.4) | |
2004年 | 3月 | 第4回 | 1,093 | 919 | 630 | 68.6% | (-17.8) |
9月 | 第5回 | 906 | 727 | 582 | 80.1% | (+11.5) | |
2005年 | 3月 | 第6回 | 871 | 694 | 552 | 79.5% | (-0.6) |
9月 | 第7回 | 614 | 487 | 368 | 75.6% | (-3.9) | |
2006年 | 3月 | 第8回 | 762 | 589 | 457 | 77.6% | (+2.0) |
9月 | 第9回 | 657 | 503 | 412 | 81.9% | (+4.3) | |
2007年 | 3月 | 第10回 | 640 | 498 | 387 | 77.7% | (-4.2) |
9月 | 第11回 | 693 | 589 | 477 | 81.0% | (+3.3) | |
2008年 | 9月 | 第12回 | 897 | 769 | 589 | 76.6% | (-4.4) |
2009年 | 10月 | 第13回 | 832 | 723 | 570 | 78.8% | (+2.2) |
2010年 | 10月 | 第14回 | 807 | 686 | 474 | 69.1% | (-9.7) |
2011年 | 9月 | 第15回 | 654 | 575 | 327 | 56.9% | (-12.2) |
2012年 | 9月 | 第16回 | 672 | 575 | 432 | 75.1% | (+18.2) |
2013年 | 9月 | 第17回 | 628 | 531 | 299 | 56.3% | (-18.8) |
2014年 | 9月 | 第18回 | 603 | 520 | 345 | 66.3% | (+10.0) |
2015年 | 9月 | 第19回 | 552 | 494 | 295 | 59.7% | (-6.6) |
2016年 | 9月 | 第20回 | 932 | 845 | 522 | 61.8% | (+2.1) |
しかし、試験開始当初に比べると、合格率が下降傾向にある点が気になります。
ちなみに、試験の実施団体である金融財政事情研究会のサイトによると、3級DCプランナーに求められるレベルは下記のとおりです。

実施年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |||
2001年 | 9月 | 第1回 | 13,348 | 11,572 | 4,386 | 37.9% | ----- |
2002年 | 3月 | 第2回 | 10,188 | 7,632 | 2,409 | 31.6% | (-6.3) |
9月 | 第3回 | 7,113 | 5,636 | 2,124 | 37.7% | (+6.1) | |
2003年 | 3月 | 第4回 | 6,709 | 5,071 | 1,239 | 24.4% | (-13.3) |
9月 | 第5回 | 5,347 | 4,055 | 1,803 | 44.5% | (+20.1) | |
2004年 | 3月 | 第6回 | 5,238 | 3,958 | 1,714 | 43.3% | (-1.2) |
9月 | 第7回 | 5,044 | 3,874 | 1,726 | 44.6% | (+1.3) | |
2005年 | 3月 | 第8回 | 5,400 | 3,877 | 1,406 | 36.3% | (-8.3) |
9月 | 第9回 | 4,629 | 3,395 | 2,040 | 60.1% | (+23.8) | |
2006年 | 3月 | 第10回 | 4,026 | 2,906 | 1,104 | 38.0% | (-22.1) |
9月 | 第11回 | 3,829 | 2,960 | 1,266 | 42.8% | (+4.8) | |
2007年 | 3月 | 第12回 | 4,054 | 2,941 | 790 | 26.9% | (-15.9) |
9月 | 第13回 | 4,281 | 3,401 | 1,977 | 58.1% | (+31.2) | |
2008年 | 9月 | 第14回 | 3,860 | 3,092 | 1,166 | 37.7% | (-20.4) |
2009年 | 10月 | 第15回 | 3,413 | 2,749 | 1,595 | 58.0% | (+20.3) |
2010年 | 10月 | 第16回 | 3,154 | 2,501 | 1,011 | 40.4% | (-17.6) |
2011年 | 9月 | 第17回 | 2,571 | 2,127 | 872 | 41.0% | (+0.6) |
2012年 | 9月 | 第18回 | 2,348 | 1,959 | 1,010 | 51.6% | (+10.6) |
2013年 | 9月 | 第19回 | 2,113 | 1,775 | 1,011 | 57.0% | (+5.4) |
2014年 | 9月 | 第20回 | 1,995 | 1,656 | 1,038 | 62.7% | (+5.7) |
2015年 | 9月 | 第21回 | 2,210 | 1,839 | 1,197 | 65.1% | (+2.4) |
2016年 | 9月 | 第22回 | 3,001 | 2,499 | 961 | 38.5% | (-26.6) |
誰でも自由に受けることのできる、この手の資格試験は勉強不足の受験者も少なくないので、試験対策をしっかりと行ってから本試験に臨んでいるような方であれば、合格率はもう少し高くなるはずです(プラス5~10%上乗せして考えてよい)。
そのため、2級DCプランナー試験は、市販のテキストや問題集を使った独学でも十分合格を狙えるレベルの難易度と考えられますが、2016年に実施された第22回試験に注目してください。 前年度に比べ、合格率が大幅にダウン(-26.6ポイント!)しており、受験者にとっては厳しい試験になったことが予想されます。 2級試験では、過去にも何度か30%台(または、それ以下)にまで落ち込む試験年度がありましたが、同試験は絶対評価試験(予め公表されている合格ライン(7割)以上の得点を上げれば合格する制度)なので、試験問題の難易度に左右されてしまうという、いわば運点が要素があり、その点が受験者泣かせでもあります。 |

第20回試験以降、若干、回復しつつあるようにも見えますが、DCプランナー試験は、回を重ねるごとに受験者数は落ち込んでおり、資格に対する魅力を感じなくなった人が増えていることが伺えます。
今後、DCプランナーという資格が、どのような方向に進むか分かりませんが、今のままではマイナー資格と言われても仕方ないような気がします。
実施年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |||
2002年 | 3月 | 第1回 | 2,017 | 1,497 | 274 | 18.3% | ----- |
9月 | 第2回 | 1,542 | 1,191 | 340 | 28.5% | (+10.2) | |
2003年 | 3月 | 第3回 | 1,552 | 1,124 | 167 | 14.9% | (-13.6) |
9月 | 第4回 | 1,449 | 1,083 | 246 | 22.7% | (+7.8) | |
2004年 | 3月 | 第5回 | 1,451 | 1,047 | 386 | 36.9% | (+14.2) |
9月 | 第6回 | 1,319 | 937 | 175 | 18.7% | (-18.2) | |
2005年 | 3月 | 第7回 | 1,500 | 1,031 | 306 | 29.7% | (+11.0) |
9月 | 第8回 | 1,199 | 863 | 136 | 15.8% | (-13.9) | |
2006年 | 3月 | 第9回 | 1,483 | 1,003 | 118 | 11.8% | (-4.0) |
9月 | 第10回 | 1,321 | 979 | 262 | 26.8% | (+15.0) | |
2007年 | 3月 | 第11回 | 1,420 | 905 | 111 | 12.3% | (-14.5) |
9月 | 第12回 | 1,242 | 883 | 277 | 31.4% | (+19.1) | |
2008年 | 9月 | 第13回 | 1,120 | 833 | 308 | 37.0% | (+5.6) |
2009年 | 10月 | 第14回 | 919 | 701 | 211 | 30.1% | (-6.9) |
2010年 | 10月 | 第15回 | 944 | 727 | 302 | 41.5% | (+11.4) |
2012年 | 1月 | 第16回 | 1,012 | 800 | 353 | 44.1% | (+2.6) |
2013年 | 1月 | 第17回 | 891 | 680 | 130 | 19.1% | (-25.0) |
2014年 | 1月 | 第18回 | 975 | 765 | 248 | 32.4% | (+13.3) |
2015年 | 1月 | 第19回 | 952 | 748 | 324 | 43.3% | (+10.9) |
2016年 | 1月 | 第20回 | 1,139 | 864 | 80 | 9.3% | (-34.0) |
2017年 | 1月 | 第21回 | 1,308 | 1,032 | 254 | 24.6% | (+15.3) |
1級ともなると、非常に細かい知識が問われるため、試験範囲は非常に広くなります(その範囲は2級の2倍以上!)。
そのため、近年の出題傾向を把握し、試験に狙われそうな重要項目から重点的に学習するなど、効率の良い試験対策が2級試験以上に求められます。

DCプランナー試験は絶対評価試験なので、規定の合格基準である満点の70%以上の得点があれば、誰でも合格することのできます。
にもかかわらず、合格率が激しく変動するということは、2級試験と同じく本試験で出題される問題の難易度が、毎年、安定していないことの表れでもあります。
したがって、DCプランナー試験は、本試験問題の難易度によって合否が左右されてしまう、いわば運的な要素をもった試験だということも否定できません。
\ | 1級 | 2級 | 3級 |
受験資格 | DCプランナー2級合格者 | 特になし | 特になし |
受験料 | 10,800円 | 6,480円 | 4,320円 |
試験時間 | 基礎編…150分 応用編…120分 |
150分 | 120分 |
出題形式 | 基礎編…四答択一式問題 応用編…記述式問題 |
四答択一式問題 《マークシート形式》 |
三答択一式問題 《マークシート形式》 |
出題数 | 基礎編…50問程度 応用編…5題程度 |
45問程度 | 45問程度 |
合格基準 | 140点以上/200点満点 | 70点以上/100点満点 | 70点以上/100点満点 |
■出題分野 A分野:わが国の年金制度・退職給付制度 B分野:確定拠出年金制度 C分野:投資に関する知識 D分野:ライフプランニングとリタイアメントプランニング |
《2級DCプランナー認定試験の出題配分》
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《2級DCプランナー認定試験の出題配分》
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一方、C分野は計算問題が多いのが特徴で、公式を暗記するよりも理解力重視の学習に努めることが大切です(特に応用問題に対処するため!)。
また、D分野は配点が低い割に、得点しやすい問題も多いので、ライフプランニングの基礎知識を押えるとともに、その基本的な考え方を整理して覚えておくとよいでしょう。
しかし、試験内容が一部被るFP試験と比較した場合、全体的にはDCプランナー試験の方が難易度が低く感じられるはずなので、市販テキストや問題集を利用した独学でも十分合格は狙えるはずです。