電気通信主任技術者は、通信の民営化※に伴い、昭和60年(1985年)に創設された資格なので、今では30年ほどの歴史ある国家資格となりましたが、試験開始当初に比べると、受験者数、合格者数共に大幅に減少しているようです。
※ 公衆電気通信法の改正(つまり、電気通信事業法の成立)と電電公社の民営化が行われています。
また、一般的に国家資格に属する試験は、公的資格や民間資格などに比べると、試験の難易度は高く、合格率も低くなる傾向が見られるようなので、電気通信主任技術者試験も同じような特徴が見られるのか・・・
これまで実施されてきた試験結果を基に、受験者数や合格者数、あるいは合格率がどのように推移してきたのか少し分析してみたいと思います。
《電気通信事業法 第46条より一部抜粋》 総務大臣は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、電気通信主任技術者資格者証を交付する。 一.電気通信主任技術者試験に合格した者 ニ.電気通信主任技術者資格者証の交付を受けようとする者の養成課程で、総務大臣が総務省令で定める基準に適合するものであることの認定をしたものを修了した者 三.前二号に掲げる者と同等以上の専門的知識及び能力を有すると総務大臣が認定した者 |
\ | 申請者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | ||
H18年度 | 第1回 | 2,925 | 2,355 | 226 | 9.6% | (-10.7) |
第2回 | 3,232 | 2,501 | 582 | 23.3% | (+13.7) | |
H19年度 | 第1回 | 2,776 | 2,271 | 487 | 21.4% | (-1.9) |
第2回 | 3,703 | 2,962 | 665 | 22.5% | (+1.1) | |
H20年度 | 第1回 | 3,452 | 2,872 | 611 | 21.3% | (-1.2) |
第2回 | 4,204 | 3,450 | 625 | 18.1% | (-3.2) | |
H21年度 | 第1回 | 4,078 | 3,474 | 804 | 23.1% | (+5.0) |
第2回 | 4,764 | 3,998 | 718 | 18.0% | (-5.1) | |
H22年度 | 第1回 | 4,374 | 3,687 | 629 | 17.1% | (-0.9) |
第2回 | 4,958 | 3,997 | 821 | 20.5% | (+3.4) | |
H23年度 | 第1回 | 4,146 | 3,520 | 720 | 20.5% | (±0.0) |
第2回 | 4,835 | 3,949 | 846 | 21.4% | (+0.9) | |
H24年度 | 第1回 | 4,047 | 3,373 | 566 | 16.8% | (-4.6) |
第2回 | 4,557 | 3,583 | 675 | 18.8% | (+2.0) | |
H25年度 | 第1回 | 4,250 | 3,487 | 474 | 13.6% | (-5.2) |
第2回 | 4,665 | 3,718 | 678 | 18.2% | (+4.6) | |
H26年度 | 第1回 | 4,000 | 3,285 | 498 | 15.2% | (-3.0) |
第2回 | 4,802 | 3,906 | 776 | 19.9% | (+4.7) | |
H27年度 | 第1回 | 4,374 | 3,689 | 735 | 19.9% | (±0.0) |
第2回 | 5,194 | 4,164 | 827 | 19.9% | (±0.0) | |
H28年度 | 第1回 | 4,386 | 3,680 | 739 | 20.1% | (+0.2) |
第2回 | 4,766 | 3,855 | 720 | 18.7% | (-1.4) |
参考までに、試験開始から現在に至るまでの試験結果(申請者数、受験者数、合格者数)を折れ線グラフにしてみました。
その資料がこちらです。

試験開始当初の受験者数が、今では考えられないほど多かった理由は、電気通信事業者に電気通信主任技術者を選任する義務(電気通信設備の工事や維持、運用の監督者として業務にあたらせなければならない)があったためです。
つまり、仕事上、必要に迫られ駆け込み受験した者が多かったからだと思われます。
そして、その後はバブル崩壊により、申請者数は4,000人台(受験者数は3,000人台)まで落ち込みましたが、ITバブルと呼ばれる新たな時代に突入したため、業界の活性化により、申請者数は増加に転じています。
しかし、その増加傾向も長くは続かず、ITバブルの崩壊により、再び減少傾向に転じ、申請者数は現在の4,000人台まで落ち込んでいるというのが現状のようです。
このような背景を踏まえると、電気通信主任技術者は、どうやら景気の影響を受けやすい資格のようです。
では、次に試験合格率の方を振り返ってみましょう。
平成18年度以降の試験合格率の詳細なデータ(数値)については、上記表をご覧になっていただくとして、ここではさらに試験開始から現在に至るまでの合格率の推移を折れ線グラフにしたものを載せておきます。

この回の合格率は9.6%と過去最低の数値となっていますが、これは電気通信主任技術者試験の合格基準が予め公表されている絶対評価試験だということが少なからず影響していると思われます。 絶対評価試験とは、規定の合格基準(つまり、各試験科目ともに満点の60%以上)さえ満たしていれば、原則、合格する試験制度なので、試験問題が易しいと合格ラインを超える受験者数が増え、当然合格率も上がりますが、逆に試験問題の難易度が高いと合格者数も激減してしまう…といった現象が起こりうるわけです。 したがって、電気通信主任技術者試験が絶対評価試験である以上、今後も平成18年度に起こったような合格率の急激な落ち込みがないとは言い切れませんが、この場合は単に運が悪かったと気持ちを切り替え、翌年度の試験に向けて早めに対策に取り組むことが大切です。 |
電気通信主任技術者試験は、ネットワークを構成する設備によって〝伝送交換主任技術者〟と〝線路主任技術者〟の2種類に区分されます。
そのため、受験者がどちらの区分を選択するかによって、試験内容(専門的能力と設備(管理)科目で異なってきます。)が変わってくるので、今度は試験区分別にみた合格率の推移状況についてまとめてみました。
\ | 伝送交換主任技術者 | 線路主任技術者 | |||||||
申請者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 申請者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | ||
H21 | 第1回 | 2,810 | 2,355 | 496 | 20.6%(+2.7) | 1,268 | 1,119 | 318 | 28.4%(+9.8) |
第2回 | 3,367 | 2,796 | 461 | 16.5%(-4.1) | 1,397 | 1,202 | 257 | 21.4%(-7.0) | |
H22 | 第1回 | 3,103 | 2,604 | 388 | 14.9%(-1.6) | 1,271 | 1,083 | 241 | 22.3%(+0.9) |
第2回 | 3,534 | 2,844 | 632 | 22.2%(+7.3) | 1,424 | 1,153 | 189 | 16.4%(-5.9) | |
H23 | 第1回 | 2,958 | 2,496 | 516 | 20.7%(-1.5) | 1,188 | 1,024 | 204 | 19.9%(+3.5) |
第2回 | 3,431 | 2,759 | 624 | 22.6%(+1.9) | 1,404 | 1,190 | 222 | 18.7%(-1.2) | |
H24 | 第1回 | 2,810 | 2,328 | 418 | 18.0%(-4.6) | 1,237 | 1,045 | 148 | 14.2%(-4.5) |
第2回 | 3,200 | 2,466 | 416 | 16.9%(-1.1) | 1,357 | 1,117 | 259 | 23.2%(+9.0) | |
H25 | 第1回 | 3,033 | 2,488 | 356 | 14.3%(-2.6) | 1,217 | 999 | 118 | 11.8%(-11.4) |
第2回 | 3,394 | 2,689 | 546 | 20.3%(+6.0) | 1,271 | 1,029 | 132 | 12.8%(+1.0) | |
H26 | 第1回 | 2,890 | 2,368 | 371 | 15.7%(-4.6) | 1,110 | 917 | 127 | 13.8%(+1.0) |
第2回 | 3,553 | 2,869 | 548 | 19.1%(+3.4) | 1,249 | 1,037 | 228 | 22.0%(+8.2) | |
H27 | 第1回 | 3,283 | 2,752 | 578 | 21.0%(+1.9) | 1,091 | 937 | 157 | 16.8%(-5.2) |
第2回 | 3,825 | 3,037 | 659 | 21.7%(+0.7) | 1,369 | 1,127 | 168 | 14.9%(-1.9) | |
H28 | 第1回 | 3,196 | 2,678 | 486 | 18.1%(-3.6) | 1,190 | 1,002 | 253 | 25.2%(+10.3) |
第2回 | 3,468 | 2,792 | 476 | 17.0%(-1.1) | 1,298 | 1,063 | 244 | 23.0%(-2.2) |


そのため、この推移状況を見る限りでは、本試験の問題レベルが一定ではなく、回によって難易度に差があるように思えますが、伝送交換と線路とで合格率に大幅な差があるわけではなさそうです。
詳細については公式HPで確認できますが、参考までに主な免除条件を下記に挙げてくので、該当するような受験者は、この免除制度をうまく利用しましょう。
保有資格 | ■旧第二種伝送交換主任技術者 ■工事担任者(アナログ第三種/デジタル第三種/AI第三種/DD第三種を除く) ■第一級陸上無線技術士 ■第一級総合無線通信士、第一級海上無線通信士又は第二級陸上無線技術士 等 |
学歴 + 実務経験 |
■大学卒で電気通信工学に関する学科履修者 ■短大、高専又は旧制の専門学校卒で電気通信工学に関する学科履修者 ■高校(中等教育学校、旧制の中学を含む)卒業者 ※ プラス、一定期間の実務経験が必要。 |
その他 | ■科目合格者(伝送交換主任技術者試験/線路主任技術者試験) ※ 試験免除の有効期間あり! ■認定学校(総務大臣の認定した教育施設)の単位修得者 |