そこで、気になってくるのが試験の難易度ですが、消防設備士の試験問題(いわゆる、過去問)は、一般公開されることはありません。
したがって、過去問題に目を通し、本試験で出題される問題の難易度を分析するといった試験対策が行えないため、果たして自分が合格することのできるレベルの試験なのだろうかと、不安を抱いているビギナー受験者も少なくないようなので、これまでの受験者データや試験情報を基に消防設備士試験の難易度をできるだけ客観的に分析してみたいと思います。
\ | 2013年度 (H25.4~H26.3) | 2014年度 (H26.4~H27.3) | 2015年度 (H27.4~H28.3) | |||||||
試験の種類 | 受験者(人) | 合格者(人) | 合格率 | 受験者(人) | 合格者(人) | 合格率 | 受験者(人) | 合格者(人) | 合格率 | |
甲種 | 特類 | 1,211 | 382 | 31.5% | 1,125 | 306 | 27.2% | 1,168 | 190 | 16.3% |
第1類 | 10,479 | 2,552 | 24.4% | 10,948 | 2,977 | 27.2% | 11,927 | 2,712 | 22.7% | |
第2類 | 2,540 | 952 | 37.5% | 2,783 | 1,028 | 36.9% | 3,025 | 892 | 29.5% | |
第3類 | 3,081 | 917 | 29.8% | 3,279 | 979 | 29.9% | 3,326 | 877 | 26.4% | |
第4類 | 17,491 | 5,859 | 33.5% | 17,936 | 6,269 | 35.0% | 18,958 | 5,494 | 29.0% | |
第5類 | 3,107 | 1,036 | 33.3% | 3,166 | 1,037 | 32.8% | 3,265 | 1,048 | 32.1% | |
合計 | 37,909 | 11,698 | 30.9% | 39,237 | 12,596 | 32.1% | 41,669 | 11,213 | 26.9% | |
乙種 | 第1類 | 2,630 | 740 | 28.1% | 2,568 | 854 | 33.3% | 2,622 | 754 | 28.8% |
第2類 | 805 | 243 | 30.2% | 754 | 264 | 35.0% | 752 | 228 | 30.3% | |
第3類 | 747 | 237 | 31.7% | 781 | 208 | 26.6% | 802 | 262 | 32.7% | |
第4類 | 9,682 | 3,693 | 38.1% | 11,156 | 3,789 | 34.0% | 12,068 | 3,418 | 28.3% | |
第5類 | 1,095 | 448 | 40.9% | 986 | 425 | 43.1% | 958 | 376 | 39.2% | |
第6類 | 22,086 | 7,821 | 35.4% | 21,784 | 9,200 | 42.2% | 20,099 | 7,888 | 39.2% | |
第7類 | 5,937 | 3,641 | 61.3% | 5,844 | 3,489 | 59.7% | 5,878 | 3,377 | 57.5% | |
合計 | 42,982 | 16,823 | 39.1% | 43,873 | 18,229 | 41.5% | 43,179 | 16,303 | 37.8% |
これは甲種の資格が各種消防設備の整備・点検のほか、工事に関する作業が行えることから、より高度な専門知識が求められていることが背景のひとつにあると考えられます。

しかし、いずれにせよ(甲種・乙種)、消防設備士試験の合格率は、なにかと難しいとされている国家資格の中では、比較的、高い水準で推移していることから、独学ではまず合格が不可能と言われるほど極めて難易度の高い試験とまではいえないでしょう。
特に合格率が毎回、高水準(概ね60%前後)で推移している乙種第7類に至っては、市販テキストや問題集を使っての独学で十分対処できると考えられます。

消防設備士の筆記試験は、四肢択一のマークシート方式で行われます。
出題パターンもほぼ決まっており、本試験では正誤問題や組み合わせ問題が多数出題されていることから、甲種は若干、高度な知識が求められるものの、試験当日までに正確な知識を整理して覚えておけば、筆記試験はそれほど恐れる試験ではありません。
したがって、どちらかというと厄介なのは実技試験の方です。
実技といっても、写真やイラスト、図面等による記述式試験ですが、甲種で出題される製図問題に関しては、やや実務的な色合いの強い問題が出題されているので、この手の製図に見慣れていない受験者にとっては難易度の高い問題と感じてしまう人も少なくありません。
また、消防設備士試験は、下記のような合格基準が定められています。
各科目ごとに40%以上で全体の平均点が60%以上、かつ、実技試験(甲種特類を除く)において60%以上の成績を修めた者 |

したがって、すべての試験科目をみな同じように勉強するよりも、自分にとっての得意科目と苦手科目を見極めつつ、各科目ごとに学習時間を調節(苦手科目にかける学習時間は多めに割く)しながらバランスのよい学習を心がける必要があります。
そのため、単なる知識の丸暗記ではなく、直近の出題傾向を分析しながら試験対策をするという勉強法が苦手な受験者にとっては、ある意味、難易度の高い試験といえるかもしれません。

一昔前に比べると、消防設備士試験に関する市販テキストや問題集は増えていますが、試験の種類によっては、市販テキストや問題集は極々限られてくる(受験者数の少ない2類・3類などは制作者側もあまり力を入れていない)ので、自分にとって使いやすい教材を選ぶという余地が残っていないのが現状のようです。
つまり、良質なテキストや問題集が少ないということは、本試験で出題されないような的外れな知識を覚えてしまったり、解説が不十分なため曖昧な知識のまま本番を迎えてしまう恐れが出てくるため、使用するテキストや問題集によっては、必要以上に試験の難易度が高いと感じてしまうことがあるということです。 また、消防設備士試験関連の書籍は、取り扱っていない書店(小規模店舗では置いていない場合も…)も珍しくはないため、市販のテキストや問題集が入手しづらいといった点が受験者にとっては大きなネックとなってきそうです。 ※ 何も考えず単に市販教材を購入するのであれば、アマゾンや楽天ブックなどで十分事足りますが、ネット通販では内容をチェックできない(書籍によっては立ち読み機能がありますが…)ものも多く、自分が使いやすいと思える書籍がどうかわからないといった欠点があります。 |