そのため、本試験が行われる12月に照準を合わせて試験対策を行うわけですが、試験勉強を始めるにあたって、受験者がまず気になるのは、やはりなんといっても試験の難易度ではないでしょうか。
毎年、どんな問題が出題されているのか?
実務経験がないと答えにくいような問題は多いのか?
単に丸暗記しただけでは解答できないような、応用力重視の試験なのか?
試験範囲を隅々まで理解しておかなければ、答えられないような細かい知識まで要求されるのか?
こういったことは、過去問題を分析することで、ある程度把握することができます。
しかし、ひとくちに管理業務主任者試験の難易度といっても、人によってその感じ方は様々です。
なぜなら、試験勉強のスタートラインに立つ受験者の実力は、関連資格の取得の有無や、これまでの業務経験などによって、既に身に付いている知識に差があるので、易しく感じる人もいれば、今まで聞いたことのない専門用語ばかりで、ちょっと難しそうだと感じる人もいるからです。
したがって、●●試験は難易度が高いから難しい!といった人の意見を鵜呑みにするのではなく、試験問題の特徴を知った上で、自分はどう感じたか?の方が重要になってきます。
そこで、過去問をはじめとしたこれまでの試験データを基に、管理業務主任者試験の特徴や出題傾向等を分析してみたいと思いますが、試験の難易度が気になる方は、その点を十分に意識しながら、全体像を掴んだ上で、試験の対策を練ってください。
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本試験で出題される問題数は計50問、試験時間は2時間なので、計算上、1問あたりに割ける所要時間は〝2分24秒〟となりますが、見直し時間等を考慮すると、1問あたりに要する時間は〝2分〟前後が目安となりそうです。(もちろん、各設問の難易度やボリュームによって変わってきますが…)
出題形式 | マークシート方式(四肢択一) |
試験時間 | 2時間 |
出題問題数 | 50問 |
しかし、試験開始当初に比べると、解答するまでに時間の掛かる問題(詳しいことは後で説明しますが、個数問題など)が増えているのは間違いないので、時間の掛かりそうな出題パターンや、これはちょっと難易度が高そうだなと直感的に感じた難問は後回しにするなど、1問目から順番に解いていくのではなく、解ける問題から手を付けていくことが大切です。

H13 | H14 | H15 | H16 | H17 | H18 | H19 | H20 | H21 | H22 | H23 | H24 | H25 | H26 | H27 |
27P | 28P | 28P | 28P | 29P | 28P | 28P | 28P | 30P | 34P | 32P | 30P | 35P | 34P | 32P |
これは、管理業務主任者試験で出題された本試験問題を、大ざっぱではありますが、出題パターン別に振り分けたものです。
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\ | H14 | |
正誤問題 | 46問 (24問) |
92% |
個数問題 | 2問 | 4% |
組合せ問題 | 1問 | 2% |
会計 | 1問 | 2% |
このデータは、平成14年度の管理業務主任者試験の出題パターンを調べたものです。
この初期の出題パターンと先に示した資料を見比べると、近年は正誤問題以外の出題パターンが占める割合が増えている年度も目立ち始めているようです。
※例:個数問題の推移 … 0問(H13) - 2問(H14) - 3問(H15) - 1問(H16) - 2問(H17) - 1問(H18) - 4問(H19) - 4問(H20) - 8問(H21)- 7問(H22)
マークシート方式の選択問題を解く上で、一番厄介な出題パターンは個数問題です。
なぜなら、まずひとつ目の理由は、選択肢に明らかに間違いだとわかる個所が見つからなければ、どれも正しいように思えてしまうため、消去法を使って選択肢を絞り込むことができないからです(消去法により選択肢の数を減らすことができれば、たとえ問題の答えが解らなくても、正解率は上がる!)。
そのため、正誤問題パターン以上に正確な知識がないと、自信をもって解答することができません。
ふたつ目は、単純に選択肢を1つだけ選ばせる問題の場合、この選択肢が明らかに正しい(あるいは間違っている)と分かった時点で、他の選択肢を読み飛ばすことができます(正解肢が4にあると、すべての問題に目を通すことになりますが…)。 つまり、解答時間の短縮ができるわけですが、個数問題の場合は、必ずすべての選択肢に目を通さなければ解答できないため、問題文や選択肢が長文であればあるほど、解答するまでの時間が長くなってしまいます。 したがって、個数問題は平均して正解率も低くなる傾向が見られるため、出題パターンとしては最も嫌がられる難易度の高い問題となりやすいのです。 その個数問題の数が近年は増えている(ただし、平成27年度は減少…)ようなので、客観的に見て、管理業務主任者試験は以前よりも難しくなったといえるかもしれません。 |
過去問 管理組合の会計等に関する次の記述のうち、マンション標準管理規約及びマンション標準管理規約コメント(単棟型)(平成16年1月23日国総動第232号・国住マ第37号。国土交通省総合政策局長・同住宅局長通知。以下、本試験問題において「マンション標準管理規約」という。)の定めによれば、適切なものはいくつあるか。 ア:機械式駐車場を有する場合、駐車場使用料は、管理費及び修繕積立金とは区分して経理することもできる。 イ:管理組合の会計処理に関する細則の変更は、理事会の決議だけでできる。 ウ:長期修繕計画の変更は、理事会の決議だけでできる。 エ:駐車場使用料は、その管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。 1 一つ 2 二つ 3 三つ 4 四つ 【H27年度:管理業務主任者試験より抜粋】
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下記にまとめた資料は、平成24年度の管理業務主任者試験で出題された各問題の出題項目を大まかに示したものです。
問1:民法・区分所有法 | 問11:滞納管理費 | 問21:建築基準法 | 問31:区分所有法 | 問41:民法・宅建業法 |
問2:民法 | 問12:標準管理規約 | 問22:コンクリートの知識 | 問32:標準管理規約 | 問42:マンション立替え円滑化法 |
問3:民法 | 問13:標準管理規約 | 問23:タイル仕上げ | 問33:区分所有法・標準管理規約 | 問43:民法・借地借家法 |
問4:民法 | 問14:会計処理 | 問24:飲料用水槽の構造と設置 | 問34:区分所有法 | 問44:各種法令 |
問5:民法 | 問15:会計処理 | 問25:給水ポンプ | 問35:標準管理規約 | 問45:宅建業法 |
問6:民法 | 問16:税務上の取扱い | 問26:結露の発生原因 | 問36:区分所有法 | 問46:マン管適正化指針 |
問7:標準管理委託契約書 | 問17:建築基準法 | 問27:コンクリートの知識 | 問37:区分所有法 | 問47:マン管適正化法 |
問8:標準管理委託契約書 | 問18:建築基準法 | 問28:マンションの省エネ対策 | 問38:区分所有法 | 問48:マン管適正化法 |
問9:標準管理委託契約書 | 問19:消防法 | 問29:区分所有法・標準管理規約 | 問39:区分所有法 | 問49:マン管適正化法 |
問10:滞納管理費 | 問10:滞納管理費 問20:免震構造 |
問30:標準管理規約 | 問40:民法 | 問50:マン管適正化法 |
かといって、関連法令だけ徹底してマスターすればよいというわけではありません。
管理業務主任者試験は、毎年数問、必ず出題される税務・会計・仕分問題、そして、最も厄介な受験者泣かせの分野が修繕・維持関連です。
建築士等の技術系の資格を持っている方であれば、逆に得意分野となり得ますが、まったく知識のないゼロから学ぶようなビギナー受験者にとっては、非常に手こずる分野であり、難易度が高く感じてしまう人が多いようです。
それはなぜかというと、出題範囲があまりにも広すぎてポイントが絞りづらいためです。
また、本試験では、類似問題も出題されていますが、毎年と言っていいほど、見たこともない新問が出題されており、稀にほとんどの受験者が感で答えるしかないような難易度の高い問題も見られます。
そのため、1点でも多く得点を稼ぎたいと思うと深入りしすぎてしまうため、他分野の勉強が疎かになり、取れたはずの問題を落とすことにもなりかねないので、いったいどこまで踏み込んで勉強すればよいのか、その見極めが難しい分野と言えます。
では、次に問題自体の質はどうなのかについて少し考察してみましょう。
管理業務主任者試験がスタートした初期の頃は、先にも示した資料に見られるように、正誤問題パターンがとにかく多く、問題自体も専門用語や各種法令の知識を知っているかという確認的な基本問題が中心でしたが、回を重ねるごとに応用問題が目立つようになってきました。
たとえば、他の法律と比較しながら、●●法を理解しているか求めてきたり、例を挙げて、このケースでは、どのような点に問題があるかといった受験者に考えさせるような問題です。
したがって、過去問の丸暗記で試験に望んでしまうと、ちょっと視点を変えた形で問題が出題された場合に、自信をもって解答できないという人もいるようです。
また、前よりも細かな知識が問われる問題も目立つので、単に過去問が解けるというレベルでは得点し難くなってきました。
なんにせよ、受験者が学習すべき試験範囲はとにかく広いので、問題自体の難易度はそれほど高くなくても、勉強していない範囲から出題されてしまうと、自信を持って解答することができなくなるといった点が、この試験の難しさと言えそうです。
右記に示した資料が、過去に行われた試験の合格基準点ですが、初年度はともかく、それ以降は32点~37点の間で推移しています。
H13 | 38点 | H21 | 34点 |
H14 | 33点 | H22 | 36点 |
H15 | 35点 | H23 | 35点 |
H16 | 37点 | H24 | 37点 |
H17 | 36点 | H25 | 32点 |
H18 | 33点 | H26 | 35点 |
H19 | 33点 | H27 | 34点 |
H20 | 34点 | H28 | 35点 |
出題パターンや問題の難易度は、初期の頃に比べると上がっているにもかかわらず、合格基準点はそれほど大きな変動は見られません。
むしろ、見方によっては、基準点は緩やかに上昇しているように思えなくもありません。
では、これはどういうことかというと、まずひとつ考えられることは、管理業務主任者試験を受ける受験者全体のレベル(実力)が上がったという見方ができます。
つまり、本試験問題自体の難易度は回を重ねるごとに上がってはいるものの、それに比例して、受験者全体のレベルも上がっているので、合格基準点を下げなくても、合格率には影響がないということです。
ちなみに、合格率の推移状況の分析でも触れていますが、管理業務主任者試験は合格率が20%前後で推移するよう基準点が調整している意図がみられます。
これは、受験者がしっかりと試験対策をした上で本試験に臨んでいることを意味しているわけですが、一方で、次のような見方もできます。
それは、過去の試験結果をみれば分かるように、管理業務主任者試験の受験者数は、緩やかに減少傾向にあります。
つまり、年々、興味本位で受ける、言葉は悪いですが〝冷やかし組〟が減る一方で、立場上、どうしても資格が無ければ困るというような人の占める割合が増えたため、本試験問題の質や難易度はそれほど上がっていないけれど、落ちるべくして落ちる受験者数の数が減ったために、表面(数値)上は合格率に大きな変化が見られないという見方です。
そのため、1度目の試験は適当に勉強して者も、2度目、3度目とリベンジしているうちに、試験に対して徐々に前向きに取り組みはじめ、試験慣れした人が合格を手にしているということも考えられます。
また、管理業務主任者試験は、宅建試験合格者やマンション管理士試験受験者が、ダブルライセンスを目指して受験してくるケースも多いため、それなりに知識をもった受験者同士で競い合うことになります。
そういう意味では、受験者全体のレベルが上がれば上がるほど、ビギナー受験者はより努力せざるを得ない状況に追い込まれるのは確かです。 いずれにしても、本試験問題が難化傾向にあることは間違いないので、これからはじめて試験勉強を始めるようなビギナー受験者にとっては、以前よりも学習すべき内容は濃いものになるかと思われます。 しかし、最近は管理業務主任者試験対策向けの市販教材もかなり充実してきており、勉強しやすい環境が整っている(試験開始当初は、過去問等のデータも少なく、教材も限られていたので、個人では試験対策が立てにくかったという問題点があった)ので、問題が難しくなったというだけで、以前よりも合格が厳しくなったと単純に比較することはできません。 |